第一物語・後半-日来独立編-
第五十三章 その場所へ想い走らせたならば《4》
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の時は一瞬だった。
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一メートルも無い距離に来たセーランを見て、ギリギリまで実之芽は自分に近付けさせた。
右腕に雷を集中的にまとわせ、相手に右腕による攻撃を行うと判断させる。だが惑わすために左腕にも僅かながら雷をまとわせて、もしもの場合を相手に想像させる。
通常はここまでで、どちらかを判断させる。が、自分は更に一手を足す。
足すのは足技によるフィニッシュ。
右、左、どちらから攻撃が来るのかを相手に考えさせ、本命は足技という構成だ。
一手先を読んでは回避は難しい。
二手先を読まなければいけないが、その前に相手は足技を食らってお仕舞いだろう。
雷を発生させるなど容易いことだ。
雷をまとわせていない箇所からでも、一気に雷をまとわさせ、強烈な一撃を叩き込める。
行ける。
確信に似たものを実之芽は得た。
相手である日来の長は何を考えているのか全く分からないが、きっと彼方も接近戦でのフィニッシュを狙っているのだろう。
それとも左足に付けた流魔線を縮ませ、こちらを近付けさせる気なのか。
いや、迷っている暇は無い。
考えを止めた時、雷光と共に雷鳴が鳴り響いた。
近付いたセーランに足蹴り、詳しく言えば膝による腹部への打撃が行われた。
腹部はへこみ、だが、
「あんがとよ」
吹き飛ばなかった。
馬鹿な。
実之芽の頭に疑問が過った。
足技は決まった。御雷神|《タケミカヅチ》による雷も申し分無い威力だった。
だが、相手は吹き飛ばなかった。
今思えば流魔の活性化という現象だけで防げる程、神化系術は弱くは出来ていない。
確かに神の力を鹿島神宮経由で伝播しており、本来の御雷神の力とは遥かに遠いものだが、それでも人間相手には強過ぎる力だ。
だから流魔の活性化だけで受け止めきれる程、神化系術は柔ではない。
ならば考えられることは一つだけ。
前もそうだったが系術も加護も発動している雰囲気がないことから、答えは必然に一つとなる。
「貴方、まさか宿り主――!?」
笑うだけで返事は返ってこなかった。
代わりというように、
「紡げ!」
一言が響いた。
起こるのは実之芽を縛ろうとする無数の流魔線の群れが、一気に襲って来た。
セーランが実之芽へと向けた左手からではなく、全ての流魔線は前に放たれた棒からだった。
一本の棒に付き十数から数十の流魔線が放たれ、地面に、艦に、船に、全てのものに繋がることなく跳ね返り、最終的に向かったのは実之芽ただ一点だ。
左足は上げており、今は右足一本だけで立っている。そのためセーランが前に出した左の指先で押されただけで、簡単にバランスを崩した。
隙を伺っていたように無数の流魔線は実之芽へと繋がって、ほぼ全ての流魔線が鎖のよう
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