第一物語・後半-日来独立編-
第五十三章 その場所へ想い走らせたならば《4》
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差し伸べられた手は打ち払われ、少しばかしセーランは呆然とした。
しかし、そうかと分かったように息を鼻で吐いた。
「意地ってやつか。全く素直じゃないなあ」
「貴方に手を差し伸べられる程、私は弱くはないわ」
「ならどうするんだよ。助けに行かなくてもいいのか」
奥歯を噛み締め、冷静さを保つようにした。
怒りは思考を鈍らせる。
だから実之芽は冷静であることを、常に心掛けた。
「今の私の役目は貴方を解放場へと向かわせないこと。だからそれを実行するだけよ」
「はあ……。まあ、お前がそう言うなら仕方ねえわな。でも行かせてもらうぜ」
「私は、やってみせる……!」
開いていた二人の距離が、再び音を立てながら縮まった。
先攻を取ったのは実之芽。
戦闘が始まるや否や、セーランの頭上から雷を落としたのだ。
内部流魔の残量的にもここは回避の判断を下したセーランは、消費の少ない流魔線によって、前と同じ戦闘艦の外装甲に流魔線を繋ぎ、縮めて回避した。
流れは止めずに外装甲から流魔線を切り離し、宙で腕を振って実之芽の近くに流魔線を繋げた。
流魔線は物質濃度に至るまで切ることは出来無い。
物質濃度になって初めて物質となり、触れることが出来る。
使用者は通常、握る箇所のみを濃度を濃くしているため握ることが出来る。
だが流魔線全体がそうでは無いため、実之芽は大きめのバックステップを一つ入れた。
迫るセーランを見て、殴るように右の拳を後ろ、左の拳を前へ。足も同じに構えた。
これに反応したセーランは流魔線を切り離そうとするが、
「雷砲!」
踏み込み、実之芽は右の拳を放った。
それによって生まれた雷の砲撃。
一メートルはあろう砲弾状の雷撃が、宙にいるセーランに向かった。
避けるのは困難だと、盾を創ることで防御を行う。
盾にぶつかる雷撃は衝突した途端、破裂し、割れ、複数の雷となって背後からセーランを襲った。
複数の雷鳴が響く。
光が放たれるなかで、黒い影が現れた。
雷を浴びたセーランだ。
まとう制服は焼けた跡を残し、彼の皮膚は微かに黒ずんでいた。
宙を落下しながら投げた流魔操作によってつくられた、何本目から青い棒を実之芽に向かって投げる。
割れ、複数の細い棒となって向かう。
「またそんな棒で。そんなので私を倒せると思っているの!」
「思ってないさ。こちらにも考えはあるもんでね、そう怒らない怒らない」
両手の先から雷を起こし、鞭状にして棒を凪ぎ払った。
そのまま鞭を背後へとやり、勢いよく、ぶつけるような勢いでセーランに向かって振り下ろした。
「やれやれ面倒だよ」
着地したセーランは即座に回避の行動を取る。
振り下ろしは直線的だ。ならば横へと走り抜くだけ。
数歩のみ
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