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鳳苗演義
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避けるような重心の掛け方をしているにもかかわらずその靴は随分使い込んだ物に見える。普通サイズの合わない靴を好んで使い込む物などおるまいよ。つまりその服も靴も自分のものではない」
「なんか探偵みたいだね?ホームズとか依頼者の身なりでいろいろ予測してたし」

うむむ、と唸る苗。ホームズと言うのは確か有名な探偵小説の主人公だったと記憶しているが生憎伏羲はまだ読んだことが無かった。何にせよ質問を続けることにしよう。

「さて、次の質問だが・・・何故お主が借り物の服で町をうろついているのか?この町に来て間もないと言っておったが、引っ越しなどならば着る服に困ることは考えにくい。また着る服が無いというのも一般家庭では可能性が低い。服など幾らでも売っておるしのう」

そこで言葉を切った太公望はちらりとぽんずの方を見る。

「・・・貧乏で買えないからもらい物で我慢しているのかとも考えたが、ぽんずのような大きな猫を飼っていてお主自身も食い物に困っている気配はない事を考えるとその可能性は狭まる。よってわしはこう考えた。・・・お主、何らかの理由で自分の家に住んでおらんのではないか?しかも両親とも離れておる・・・どうだ?」
「・・・何でそこまで分かるの?」
「年の功という奴だ。ニョホホホ・・・」
「歳って・・・そこまで変わんないでしょ?」
「さぁどうかのう?ひょっとしたらわしはすんごく年を喰ってるかもしれんぞぉ〜?」

釈然としないのかぷくっと頬を膨らませる苗に太公望は意地の悪い笑みを浮かべる。
・・・ちなみに彼の太公望としての年齢はおよそ3000歳、伏羲としての年齢は下手をすれば億に届く可能性がある。正確な年齢は不明だが少なくとも苗が彼の正確な年齢を当てることは不可能に近いだろう。何せ本人も自分の年齢など覚えていないのだから。

「更に続けるぞ。家を離れておる理由は家出ではない。今時着の身着のまま家を飛び出すほど無計画な家出少女は余りおらんだろうし、お主の機転がきいてちゃっかりしておる性格から推測してもそれは考えにくい。物理的な災害や火事・・・は、そもそもこの近辺では起こっておらぬ。日曜日とはいえ子供が友達も連れず一人町探索というのも考えてみればおかしな話よな。もしお主、若しくはお主の家族が着るものにも困るほどの状況で知り合いなどの家に泊めてもらったなら、呑気に娘を散歩に見送るとは思えん」
「・・・全体的に推測だらけで物証がないね」
「だがお主に言質を取ることは出来るよ。気付いておるか?お主、さっきから少し息が乱れておるぞ」

そう言いながらも太公望はこの辺で追及を打ち切るべきだと思った。苗は先ほどから動揺を隠すようにワンピースの生地を強く握りしめ、軽く冷や汗を垂らしている。指摘した通り息も少し乱れており、激しく動揺しているのは明白だった
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