鳳苗演義
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た。
・・・実は太公望こと伏羲はこの地に来てからこの「たい焼き」という存在に度肝を抜かれた。綺麗な魚の形を模しているのになまぐさを一切使用していない甘味。まるでどうしても魚を食べたい仙人や道士のために作ったかのような形状とそれが甘味であることに激しく興味を惹かれた太公望は、たい焼きをどうしても一つ食べておきたいと思ったのだ。
スターシップ蓬莱の連中にもいい土産話になるだろう。何せ昨今人間界を自由にふらつけるのは自分と申公豹、後は教主である楊?が許可を出したスカウトメンバーだけだ。故に伏羲の地上話を娯楽にしている仙人も少なくない。
金あるのかよ、と思うかもしれないが伏羲は占いなどでちゃっかり人間界で金を稼いでおり、日本に来る前にあらかじめまとまった日本円を用意していたのだ。つまるところこの男、最初から観光する気満々である。
「「たい焼きちょーだい!」」
「あいよ!お2人さん兄妹かい?似てるねぇ〜」
「「へ?」」
太公望が横を見ると・・・さっき猫の散歩をしていた女禍の姿がそこにあった。
(し、しまったーーーーー!!もう少し離れて様子を見るはずだったのに何という凡ミス!)
そんな太公望の心を知ってか知らずか、太公望の顔を見上げ数瞬目を瞬かせた少女はニヤリと悪い顔をした後・・・
「そーなんだー!良く言われるの!という訳で代金は全部お兄ちゃんにツケといて!」
「なぬぅ!?」
「あっはっはっは!可愛い妹さんじゃないか!」
――こ、こやつ・・・兄妹と勘違いされてるのを逆手にとってたい焼き代金を儂に押し付けようとしとるだと!?なんというずる賢さ!そしてこの空気で今更他人だと言い張っても兄妹同士でじゃれ合ってるようにしか見えん!ぐぬぬ・・・悔しいが一本取られたわい。
こうして他人を利用することに関して仙人界No,1と謳われた伝説の軍師は10歳にも届かない小娘にたい焼きを奢る羽目になったのだった。
「たい焼きは頭の方が餡子が詰まってておいしいなんて言うけど、しっぽの方が皮が薄くて歯ごたえ良いよね!」
「・・・人の金で食うたい焼きはさぞ美味かろうよ」
「ひょっとして根に持ってるの?お・に・い・ちゃ・ん☆」
「止めい!全くこのわしが何故初対面のおぬしに・・・ブツブツ」
少女に良いように使われてげんなりとする太公望とは対照的に自称妹はくすくす可笑しそうに笑っている。それを横目で見た太公望には、やはり彼女が女禍とは思えなかった。
魂魄は同質。だが、人格が少々昔の彼女に似ているような気がする以外に女禍らしい部分は何一つ見当たらない。記憶喪失は流石にないだろう。魂魄から記憶を奪う方法もないではないが、彼女がわざわざそれを自分にかけたとは考えにくい。そういった
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