暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
脱走
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を鑑みれば《実験体》という単語の意味するものはただ一つ。

須郷に拉致された旧SAOプレイヤー。

彼らの精神が、いかなる形によってか、案内図に示された格納室なる場所に囚われているのだ。

アスナはしばらくその案内図と睨めっこしていたが、そのどこにもログアウトなる文字はなかった。ならば────

「マイちゃん、いい?」

「……うん、大丈夫だよ」

わかった、とアスナは応え、身を翻して湾曲した通路を再び歩き始めた。

早足で数分進むと、やがて通路の左手、外周側の壁に飾り気のないスライドドアが現れた。そばの壁面にプレートが据えられており、小さな下向きの三角印が浮き上がっている。

それを押した後、マイは黙って降りてくれた。肩車したままでは、このドアはくぐれない。

すぐさまドアがスライドし、直方体の小部屋が出現した。

中に二人して踏み込み、身体を反転させると、現実のエレベータにそっくりな操作版が目に入る。

一瞬の逡巡の後、アスナは並んだ四つのボタンのうち一番下のものを押した。

ドアが閉まり、驚いたことに僅かな落下感覚が身体を包んだ。

アスナとマイを乗せた小さな箱は、仮想の大樹の深部目指して無音で降下し、数秒後、仮想の減速感を伴いつつ停止した。つるつるした純白のドアに、直前までは存在しなかった裂け目が縦に入って左右に開く。

眼前には、上層と同じような味気ない構造の通路が一直線に伸びていた。開いたドアから顔を突き出し、人の気配がないのを確かめ、歩き始める。

オベイロンに与えられた衣装は、アスナは胸のところに赤いリボンがあしらわれているシンプルな純白のワンピース、マイはゴスロリ調の真っ黒なワンピースという非常に心許ない物だが、素足なのがこの状況ではありがたい。

靴を履いていれば多分、避けがたいほどの足音のサウンドエフェクトが発生してしまうところだ。

通路は、そう長いものではなかった。歩くうちに、前方にのっぺりとした扉が見えてきた。

もしロックされていたら、上層のラボラトリーでシステムコンソールを探そう、そう思いながらドアの前に立つと、予想に反してそれは自動ドアのように音もなく左右に開いた。

奥からさっと差し込んできた強烈な光に、思わず目を細める。

「「……………………っ!?」」

真っ白い、超巨大なイベントホールとでも言おうか。

遥か遠く、左右遠くに垂直にそびえる壁面は、ディティールがまったくないために遠近が感じ取れない。

中心部分には、半径五メートル、高さはは二十メートルあろう円形の柱が屹立しており、それが発する薄気味悪い緑色の光がこの部屋の光源になっている。

そして、それを反射して薄緑色になってしまっている白いフロアには、びっしり、かつ整然
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