第二章 三話 後ろに向かって前進 後編
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ニコーンに圧倒的に有利である。無理もない。小マゼランで絶対にお目にかかれない二千メートルクラスの超大型艦が自分たちに攻め入ってきているのだ。
精神的にも多大なダメージであることは明白である。
実際逃げ出そうとしたスカーバレル艦はいた。
しかし、愚かにも戦闘中に反転しようとしたその艦は動きが止まった瞬間ユニコーンのプラズマ砲の餌食となった。
「馬鹿め……戦闘中に動きを止めるやつがどこにいる?」
「実際いたな」
「ふん。だから死ぬのだ。死にたくなかったら動きすぎない程度にいつも動き続けた方がいいというのに。」
動かなければ的になり、動き過ぎればその先の機動を予測されて狙われる。そこ中間で先が予測しづらいように細かく動くのが一番いいのだ。
その時、ユニコーンのレーダーが新たな艦影を捉える。モニターに写されたそれらは、ある艦は砲塔が欠け、ある艦は装甲が凹み、またある艦はほぼスクラップも同然なまでにボロボロであった。
「敵の増援?……それにしては損傷が激しいな。」
「おおかたギリアスにやられて逃げてきたのだろう。ここからはギリアスも合流する。つまりは競争だ。どちらがより多く撃沈するかの……な。」
ユニコーンにおける冷静沈着の代名詞とされる白野はこの時に限って駆け出しの頃の熱血を取り戻していた。
血が滾ったのだ。若者に触発されて。
ユニコーンがあり得ない加速を見せる。そして、逃げる敵向かって来る敵全てを粉々に粉砕し始めた。
*
バウンゼィ ブリッジ
モニターには圧倒的火力で敵艦隊を殲滅していくユニコーンが映し出されていた。
さながら暴れ馬のようでもあるが、その狂暴な砲撃は全て完璧な理論と経験に裏打ちされた堅実極まる物なのでつけいる隙がない。ギリアスは内心で感動していた。自分が目指すのはあそこである、と。
「……負けてらんねぇな。」
「艦長、指示をお願いします。」
「ああ。突っ込む!」
「了解!」
そして、ギリアスもその砲撃の嵐の中に身を投じる。更なる苛烈な砲撃により、ユニコーンの嵐に揉まれるスカーバレル海賊団に引導を渡すために。
「目標確認!照準固定!」
「全砲斉射!ぶちかませ!」
プラズマの赤。レーザーの青。それぞれが色とりどりの殺戮の光である。
本来は奪う側であるはずの海賊が、今は他人に生殺与奪の権を握られていた。
そして、しばらくするとそこにはもう単なるスクラップとかつて人だった有機物が漂うだけの黒い宇宙が広がっていた。
*
ユニコーン ブリッジ
狂乱を終えたユニコーンはシャンプールを正面に捉えて静かに佇んでいた。
「惑星シャンプールの海賊団アジトから全周波通信。降伏を申し出ています。大人しくする
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