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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第32話 「燃える漢の赤いやつ」
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多い。多数決とか、衆知を集めるなんてものは、後付けの理想論だ」
「そんなもんですかねー」
「はるか昔から、人物がいない。とか戯言をほざいてきたもんだ。人物がいないなら、自分が立てよ。どいつもこいつも汚いとかほざくなら、てめえ一人でも綺麗に生きてみろって。現に帝国も同じだろ? 改革が必要だ。そう誰もが思ってきたが、実際にやったのは、片手であまるぐらいしかいねえ。ルドルフが悪いと言って動いたのは、アーレ・ハイネセンだろ。あいつが動いたから、同盟ができた。そいつがやらなくても、いずれ他の誰かがやったさ、とか、ほざく奴はただのバカだ。そんな奴の意見を聞いて、なんになる」

 それは分かる気がする。
 不平不満を漏らすのは、誰でもするが、実際に動くのはごくごく少数だ。
 自分の理想を形にするのは、大変だ。
 しかし他人の行動を貶すのは、簡単で楽だからな。
 水は低きに流れる。楽な方に流される。
 同盟の民衆が個人個人が、しっかりと考えて行動するより、政治家を貶す方が楽で、その結果自分の頭で考えようとも、行動しようともしなくなる。
 民主共和制も専制君主制も本質は同じだ。
 結局、上が考えて行動するしかない。
 下の意見を汲み上げないのではなく。汲み上げるような意見がないのだ。
 届かないのではなくて、届けようとはしないのだ。
 自分の考えや意見をしっかりと考え、届ける。それができるのであれば、自分で動いた方が早い。自分が立った方が確実だ。

 ■宰相府 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

 切れて真っ黒になった画面。
 それを見ながら、ふと考える。
 民主共和制と専制君主制。どちらが良いとも悪いとも言えない。
 言う気もない。
 俺はルドルフもアーレ・ハイネセンの事も嫌いじゃない。
 もちろんラインハルトの事もだ。
 なんだかんだ言っても、原作で実際に動いたのは、こいつらだからな。
 理由はどうであれ、帝国を変えようと動いたのは、ラインハルトだった。
 他の奴じゃない。
 ラインハルトだ。

「考えてみれば、俺が改革に乗り出したのも……こういう持って生まれた性格のせいかもな」

 あいつの行動を批判するのは、簡単だが。だったらお前が動けよと言いたくなる。
 そう言いたくなる性格。
 それが俺の原動力なのかもしれない。
 あ〜あ、俺もたいした奴じゃねえな。ま、自覚はしていたが。

「皇太子殿下っ」
「なんだ?」

 ブラウンシュヴァイク公爵が、息を切らせて部屋に飛び込んできた。
 いったい何事だ。
 何か問題でも起きたのか?

「リッテンハイムがっ。ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム候爵がぁー」
「何があったっ!!」
「専用機を買ってしまいました」
「はあ?」
「MS
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