第32話 「燃える漢の赤いやつ」
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派遣され、その乗員を住まわせるだけの部屋もある。百万人を許容できるだけの、容量があるのだ。
「フェザーン中のホテルを借りる資金を、同盟側が負担してくれるのでしたら、それでも宜しいが。一体いくらぐらいになるか、見当も付きませんな」
「そ、そんな大金は……」
「でしたら、イゼルローンしかないでしょうな。その際には、部屋代を徴収しませんから、ご安心を」
「自治領主閣下は、ご冗談がお上手ですな」
慌てて追従を見せる弁務官代理。
本気で部屋代を取ってやろうか? 宰相閣下であれば、なんと言っただろうか?
意外と辛辣な物言いをされたかもしれん。
それとも……目の前で計算機片手に、部屋代を計算されただろうか?
実際に掛かる費用を、目の前に突きつけられて、ようやく理解するタイプだな。
仮に一ディナールとして、五十万人で五十万ディナール。
百なら五百万ディナール。とゼロがドンドン増えていく。
いったいそれだけの予算が、出てくるものなのか?
弁務官代理ともなろう者が、その程度の計算もできんのか……。
それとも帝国側が全額負担してくれるとでも、甘えているのか?
世の中、そこまで甘くない。
「とまあ、こんな事がありまして、捕虜の受け渡しはイゼルローンという事になりました」
「ま、妥当なところだな」
宰相閣下が画面の向こうで、呆れたような表情を浮かべている。
なんと言おうか、ごくごく当たり前と思えることが、分かっていないような連中だと、考えておられるのだろうか……。
一般常識が通じないとでも言おうか?
なにかがずれている。
妙な解釈をする。自分に都合が良い事ばかり考える。
虫の良い思考をしている。
それはまるで……バカな門閥貴族の連中と同じだ。
「フェザーンに来てみて、分かった事があります。腐っているのは帝国だけではありませんな」
「選挙のたびに、攻めてくるような連中がまともなはずはあるまい」
「民主共和制とは、いったいなんでしょうかね?」
「理想や理念は立派なんだが、運用するのは人間だからな。そうそううまく行かないもんだ。まあ人間なんか、そんなご立派なもんじゃねえし」
運用するのは人間だ、か。
まあ確かに、人間はそれほど大したものじゃない。
だらしないし、みっともないし、情けない。
「しかしだったらどうして、民主制なんてものができたのでしょうか?」
「そりゃあ〜お前、他人には一方的に完璧さだとか、理想だとかを求めるからさ。てめえ自身のことは棚に上げ、他人には偉そうな物言いをしたがる。そんな人間が多いからだ」
「それが理由ですか?」
「ま、そんなもんだろ。選んでやった。票を入れてやった。だから自分には好き勝手に言う権利がある。そう勘違いしたがる奴も
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