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オリ主達の禁則事項
花の勇者と黒子の助言者
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これは“似たような事”を勧めた秋晴にも予想外だった。
オリ主の力はその解釈と応用で無限の広がりを見せると言う事を知ってはいたが、やはり花を生み出す程度と侮っていたのを認めない訳にはいかない。
無論、衰退につながる物ではないので問題はないが、一番の驚きは彼女にこんな偉業を成せた事だ…きっと、相当に努力したのだろう。

彼女はこの世界で生き、歳をとり、最後は多くの人に看取られながら静かに逝ったらしい。
享年97歳…二度目の死に顔は安らいだものだったという。

そんな彼女が愛用していた物、残した物がいくつか保管されているらしい。
その中に彼女が生涯手放さなかった一冊の本があると聞いて、その正体にすぐ気がついた秋晴に確かめないという選択肢はない。
原書は本人とともに埋葬されたらしいが…写本があると聞いて急いだ。

「勇者…来類咲の本は本人以外誰も読めなかったんです。解読も試みられていますが、かろうじて挿絵が彼女の生み出した花である事が分かるくらいで…文字に関しては全く理解できていません」

 そんな風に、写本を管理している図書館の受付の女性は詳しく説明してくれた。

「何で?本人は読み方を誰にも教えなかったのか?」
「…これは自分だけが読めればいい物だからって…“家族”にも…やむを得ず、文書官と芸術家は本の内容を正確に書き写す事しかできなかったのです。挿絵にしても、来類咲の持っていた原書では色鮮やかな絵であったのですが」

 言い淀んだ事が気になったが、追及はしない。
 “花”と言うこの世界では珍しい名前と、どこか懐かしい物を感じさせる容姿の彼女の案内で写本に対面した秋晴は…。

「ぶ!!」

 思わず吹き出し、ついで笑いだした。

「ッスって…ッスって…あの口癖、死ぬまで治らなかったのか?いや、一度死んでも治らなかったけど…絶対これを読まれないように読み方を教えなかったんだろ?…その気遣いには感謝するよ来類咲さん」
「あ、あの…曽祖母の本に何か?ひょっとして読めるんですか?」

 やはり彼女は来類咲の血縁者…しかも曾孫だったかと納得しつつ、もう一度写本を見る。
 確かにこれはこの世界の人間には読めまい…もし読めたら、そいつは別の世界の人間と言う事になる。

何故ならば…本の表紙には来類咲の世界の言葉で【食べられる花をつける植物図鑑】と書かれているからだ。
そして続く明らかに手書きの文字は彼女の直筆だろう。
【秋晴さん、とっても役に立ったッス。ありがとうッス】と書かれている。

「もしかして、曽祖母を知っているんですか?」
「うんまあ…俺も来類咲に救われた人間の一人って事になるんだろうね」

彼女のような人間のおかげで、秋晴は全てのオリ主を憎まずにすんでいる。
それはきっととても大
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