花の勇者と黒子の助言者
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全員が青ざめた。
誰もが将の剣が勇者に振り下ろされ、切られる未来を幻視する。
「私にできる事なんてほとんどない!!今日のことだって教えてもらって、助けてもらってやっとッス」
「ならば話しにならんな…」
「だから助けてほしいッス!!」
勇者の行動は…誰にとっても予想外だった。
彼女は、今まさに自分を殺そうとしている相手に助けを乞うたのだ。
しかもそれは自分の身の安全では無く、この戦争の…果ては両国を救うための協力要請だった。
「なん…だと?」
「私に一人協力してくれただけで、戦争を止められたッス」
「止まったんじゃない!!継続中だ!!お前の言う事は綺麗事でしかない!!」
「どっちでもいいッス!!綺麗事結構!!二人でこれだけの事が出来るんなら、皆が協力してくれたらもっとすごい事が出来るはず!!きっと世界だって救えるッス!!」
世界…その誰も考えなかったレベルの救済に、誰もが声も出せないほど驚いた。
その中心である少女の目は、将から離れない。
自分を即座に殺せる体勢のままの将の下で…彼女は震えていた。
瞳は潤み、今にも泣きそうになっている。
足は小刻みに揺れ、ちょっとおしてやれば転ぶだろう。
「もうちょっと、後少しだけ一緒に頑張ってほしいッス。これが勇者としての私からの最初で最後のお願いッス…助けてください!!」
それなのに…彼女は立っている。
文字通り自分に降ってこようとしている死を前にして…それでも逃げずに立っている。
戦争を止めるために…この世界を救うために…戦場にいる全ての人間が、真の勇者の姿を目にしていた。
長い…長い沈黙の果てに…無言と無音のままに終わりを告げた。
―――――――――――――――――――――――
「秋晴さん!!」
来類咲は自分にあてがわれた部屋に向かって走っている。
戦争は将が己の剣を下し、軍を退いた事で終了した。
敵軍の将も、武器も鎧すら帯びず、まっすぐに見つめてくる来類咲の純真と真摯な眼差しを切る事が出来なかったのだ。
この戦争の勝利者は両軍のどちらでもない。
来類咲の勝利だ。
「上手く行った。上手く行ったッス!!」
戦争を止める事が出来た。
悲劇の先送りかもしれないが、これで時間を稼げた。
問題はこの時間をどう有効に使うかである。
「うまくいったッスよ。秋晴さん!!」
体当たりするような生き王で扉を開け、中に飛び込むが…そこには誰の姿もなかった。
「秋晴…さん?どこにいるッスか?」
名前を呼んでも答える者はいない。
その内、来類咲は部屋のテーブルの上に、出る時にはなかったものが置いてあることに気がついた。
自分にはこれがあった記憶はない
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