花の勇者と黒子の助言者
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「分かった…なら…」
そう言って、秋晴は来類咲に彼女ができるであろうことを教えた。
運命を変えられるかどうか…後は来類咲しだいだ。
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翌日…両国の軍は砂漠の真ん中で対峙していた。
砂漠の広がるこの世界において、複雑な地形は少ない。
どうしても直接対決の形になってしまう。
そんな、両軍に共通しているのはその指揮の低さだ。
気迫がないというか…皆疲れた顔をしている。
全員がやせ細り、兵士として満足に戦えるのかと言う有様だ。
兵士の質が悪いのではない。
戦える人間であってもそう言う状態になってしまうのだ。
両軍の将がその手を上げ振り下ろす事で戦争が開始されようとした瞬間、片方の軍から人影が飛び出して両軍の中間の場所まで躍り出る。
若い兵士の勇み足かと見るが、その正体が先日召喚された優者だと気づき、召喚した国の軍だけでなく、相手の軍も色めき立つ。
「戦争をやめてほしいッス!!」
両軍の中間で、勇者は戦争停止を願う。
その姿は普段着で、武器はおろか鎧さえ付けていない完全な無防備だ。
戦場に立つ姿ではない。
「何をバカな!!連中を滅ぼさなければ俺達が餓死するんだ!!」
「勇者様、お戻りください!!もはや戦う以外に方法がないのです」
答えは両軍からの否だった。
その答えを予想していた来類咲は、黙って両手を掲げる。
何かの魔法かと敵軍が驚き、矢を射かけてくる。
自分に向かってくる矢の鋭さを前にしても、来類咲は引かなかった。
その刃が彼女にささろうと迫り来る直前…。
「な、何だと!!」
…風が吹いた。
そよ風では無く突風と評すべき物が…その風に夜は吹き飛ばされ、来類咲に届かない。
「行くッス!!」
その間に準備が整ったのか、来類咲が両手を振り下ろす。
敵だけでなく、味方までも思わず目をつぶった数瞬後…目を開けた彼等は信じられない物を見る事になる。
「オ…オオ…」
それは誰の発した言葉だっただろうか?
そこに広がるのは緑の絨毯、所々に赤い模様があるそれの正体は、蔦を持つ植物であり、赤い物の正体は花だ。
一瞬で現れたその光景に、誰もがあっけにとられ、泣きだす者までいる。
それは両軍問わない。
何故ならそれは、この世界の人間が誰しも願う緑あふれる光景だったのだから。
「あ、勇者様が…」
誰かの声に、全員がはっとする。
見れば勇者は歩き出していた。
向かう先は、敵軍の将軍のいる場所だ。
力強い決意の光を宿す瞳と、先ほど起こした奇跡による驚きで敵軍の兵士は勇者の通る道を開けて行く。
敵の間を通
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