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オリ主達の禁則事項
花の勇者と黒子の助言者
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った事もあった。

「そうッスか…私は望んだわけじゃないけど勇者ッス…なら、何か出来るかもしれないッスよね?」
「花を咲かせる事しかできなくても?」
「花を咲かせる事しかできなくても…この国の人たちはみんな食べる物がないからガリガリに痩せてるッス。死ぬ前にいた所でも同じ子がいて…あの時の私には何にも出来なかったけど…元から一度死んだ身ッス。もうちょっとだけ頑張ってみたいって思うのは我儘ッスか?」

 一途で純粋…それもまたオリ主に選ばれやすい人間の特徴だ。
 その…自分の選んだ能力の無能に絶望し、戦争の恐怖を誰より知りながら…それでもはにかみに似た泣き笑いを浮かべる彼女の顔は、秋晴にはとても美しく見えた。
 
「君は…」
「へ?」
「君は…もしこの戦争の中で、何かができるとしたらどうする?」
「どうするって…」

 来類咲は、秋晴の唐突な言葉に困惑する。
 秋晴は真剣だ。

「それは…止められるなら止めたいッス。でもどうやって?秋晴さんが手伝ってくれるッスか?」
「いや…力でどうにかなるもんじゃない」

 秋晴がオリ主にしか力を使わないというその誓いを反故にし、片方の軍を潰したとする。
 出来ない事じゃない。
 出来ない事じゃないが…その結果、勝った方が負けた国を蹂躙し、すべてを奪っていくだけだ。
 負けた方の国の国民は飢えて死ぬ。
 
 仮に両方の国の軍を潰したとしても、残り少ない食料を少なく広く分配するだけで両方の国が共倒れだ。
 そうならないようするための戦争なのだから…。

「ならどうするッスか?」
「…一つだけ、方法が無くもない」
「え?な、何ッスか、どうすればいいッスか、じらさないで教えてほしいッス」
「方法はある。けれど…」

 秋晴は…始めて見せる鋭い視線を来類咲に向けた。
 視線に射すくめられた来類咲が硬直する。

「君がやるんだ」
「え?」
「結構、危ない橋を渡ることになるけど、上手く行けば戦争を止められる」
「し、失敗したら…」
「死ぬかもしれない」
「死!」

 その一文字は、一度経験した彼女にとっては劇的だった。
 己の死をトラウマにしている者にとって、その一文字は恐怖以外の何ものでもない。

「…やるッス」
「いいのか?俺ならここから君を連れて逃げる事も出来るんだぞ?」
「それだけは嫌ッス…あんな気持ちは…もう嫌ッス」

 彼女の言う気持ちが何なのか…秋晴には分からない。
 生前か…きっと彼女は何かから逃げだした事があって、それを一度死んだ今も後悔しているのだろう。
 それに秋晴が踏み込む事は出来ない。
 たとえそのエピソードの内容を知ることができても、きっと実感とはほど遠い。
 それは彼女だけが分かっていればいい事だ。

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