花の勇者と黒子の助言者
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」
「花は…いなくならないッス」
秋晴は彼女の経歴を思い出す。
彼女は紛争地域で生れ、育ったらしい。
自分達の権益を守ろうとする政府軍と、現体制に不満を持ち、取って代わろうとするゲリラ、そこは人間同士が争う場所だった。
それこそ食料だけでなく、誇りや享楽、権力に金、果ては神すらも人を殺す理由になる場所…命がとても軽い場所だ。
彼女が18歳まで生きる事が出来たのは奇跡と言っていい。
それでも、来類咲は死んだ。
死因は流れ弾…撃ったのは国民を守る側であるはずの政府軍だった。
「…戦争は何時?」
「明日には始まるって聞いたッス」
時間がないにも程があるだろう。
すでに真夜中は回っている。
「長くてもあと十数時間か…」
「戦うのはいやッス…怪我をさせるのも怪我をするのもいやッス…死ぬのはもっといやッス…」
死んだ時の事を思い出したのか、来類咲の体が小刻みに揺れ始めた。
自分が死んだ瞬間の事がトラウマになるオリ主は少なくない。
特に来類咲は、これから殺し合いに放り込まれようとしているのだ。
その恐怖はどれほどの物か…。
「…一つ聞きたいんだけど…」
「はいッス…」
「何でさっきから連れて逃げてくれって言わないんだ?」
秋晴ならば、彼女を連れて逃げだす事など容易いだろう…だが、彼女はそれを望んでいるのか疑問だ。
来類咲は助けてくれとは言った。
それが連れて逃げてくれと解釈できなくもないが…どうも雰囲気が違うように感じる。
ここまで会話をしているのだから、助けてではなく逃がしてくれと言わなければならないという事に気づかないわけではないだろう。
そう考え…率直に言葉にして聞いてみた。
「でも、私がいてもいなくても戦争は起こるッス」
その通りだ。
元々、彼女は起こる戦争の勝利を確実な物にするために呼ばれたのだ。
いてもいなくても戦争は起こると理解はしているようだ。
話し方は少し間抜けだが、頭は悪くないらしい。
「私の世界と同じ事が起こって…きっと沢山人が死ぬッス」
それもまた…その通りだ。
国単位での人の生き死にが起こるだろう。
何人死ぬかではなく、何人生き残れるかだ。
それを超えても、世界が衰退している以上、過酷な生になるのは間違いない。
「秋晴さんは知ってるッスか?家族や友達が、ひょっとしたら明日にはいなくなるかもしれないって気持ち…」
「…似たような事なら、あった」
秋晴もまた、自分以外の人間の死を見て来た。
家族…友達…知らないどこかの誰か…彼等の死を見続けた果てに、秋晴は最後の一人になり、取り残されて…世界を失っても生きている。
あの時共に死ねなかった事を不幸と思
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