勇者召喚にはご用心
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押し込むその判断力と言うか根性には素直に関心する。
「す、好きでしたんじゃないッス。ふ、布団の中に男の人を入れるなんてそんなふしだらな女の子じゃないッスよ。勘違いしないでほしいッス。そ、それより助けてほしいッス」
「またそれか…えらく必死な…君の事情は知っているけど焦り過ぎじゃないか?あの幼女神から能力を貰ったんだろう?自分で決めたらしいけどそれは使えないのか?」
「た、確かに貰ったッスけど…」
「けど?」
来類咲の様子が変だ。
彼女の能力が何かは確認していないが…勇者召喚の経緯と事情を考えれば、“それなり”の能力を選んだはずなのに…何か恥ずかしがっているようにも見える。
「わ、私の能力は…これッス」
「ん?」
彼女は両手を合わせ、秋晴に差し出した。
何が起こるかと秋晴も注目する。
「…花ッス」
「へえ…」
平いた両手の間から現われたのは彼女の言うとおり…花だった。
チューリップに似た赤い花が、何もなかった彼女の手の中に現れている。
「命を作り出す能力?」
「いいえ、花を出す能力ッス」
「……………は?」
来類咲の言葉がちょっと理解できず、たっぷりと時間を取ってから疑問符が漏れた。
「は、花?」
「そうです。花を出す能力ッス」
「他には…」
「これだけッスね」
秋晴は考える…何だこれはと…。
「花を出す能力?…うん、手品としては面白いけど…」
「はい、手品位の事しかできないッスよ」
「いや、自覚あるなら態々聞く事でもないかもしれないけど…君、それでどうするつもり?」
「無理ッス」
来類咲は必死だ。
その心情は分かる。
「…俺の勘違いかもしれないけど、君って確か“戦争の旗頭”として呼ばれたんだよね?」
「残念なことに…その通りッス」
秋晴の言葉に、来類咲の表情が絶望に染まり…コクンと首肯した。
来類咲が召喚されたのは、竜を倒すためでも魔王を倒すためでもない。
戦争の戦闘に立つ勇者…人間を殺す勇者…敵国を滅ぼす勇者…それがこの国の求める勇者だった。
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