勇者召喚にはご用心
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したのはリモコンと携帯を合わせたような道具だ。
ボタンをいくつか押せば、液晶の部分に光が灯り、像が浮かび上がった。
現われたのは黄色人種の肌に黒髪、まだあどけなさを残す痩せ気味の顔…その下に彼女の物らしきプロフィールが続く。
「来類咲…享年18歳か…」
若いなと思ったが、それに関しては続く情報と死因を見て納得した。
秋晴は来類咲の情報を頭に入れていく。
「転生者じゃなく、トリッパー…ね…」
この世界の生き物に魂を入れ、生まれると言うプロセスを経るのではなく、死んだ直後にその体を再生し、異世界に放り込むタイプだ。
以前の安置もこれに該当する。
転生と違い、成人した形で行動できるという利点はあるが、逆に世界に対する認識を深める時間がなく、後ろ盾を一から作らなければならないという不利もある。
どちらがより良いと一概には言えないが、今回のトリッパーには更にもう一つ厄介な事情がくっついていた。
「しかも…“勇者召喚”か…」
勇者召喚…トリップ方法の一つではあるが、竜退治や魔王討伐等の目的を持って呼ばれるため、召喚主や国から転生物と同等かそれ以上のバックアップを得られる。
そしてその勇者召喚と言うトリップ方法が、来類咲が暴走する可能性であり…あの幼女神の大泣きの理由でもあるのだ。
――――――――――――――――――――
「ここか…」
秋晴の行動は、日が沈むのを待って行われた。
その強化されている肉体の力を十分に発揮して砂漠を駆け抜けたのだ。
リモコン携帯にはこの世界における異物…他の世界の人間の魂を識別し、マップとして液晶に表示する機能がある。
おかげでオリ主の居所は一目瞭然…そして現在、秋晴は砂漠のど真ん中、唯一の水源であるオアシスの畔にある、日干し煉瓦で作られたらしき城の前で城壁を見上げていた。
リモコン携帯の反応からも、この中にオリ主がいるのは間違いない。
召還された来類咲は、当然召喚した人間と共にいるだろう。
そして召還などという物が出来るのは基本王族かそれに近い権力をもった何者かであり、ならば勇者のいる場所は自然と城か、それでなくても特に警戒の強い場所に限定されるのだ。
秋晴が昼間に動かなかったのは、そう言う連中とまともにやりあっても得る物は無い上に、基本的にオリ主以外に秋晴は大母神の貰った力を向けないと誓いを立てているので、捨て身で来られたりするとちょっと困る。
「さって、よ!!」
鋭く吐いた呼気と共に、秋晴は飛んだ。
城壁の縁に手を掛け、勢いのまま体を上げる。
幸いなことに、巡回の人間と鉢合わせる事はなかった。
肉体能力に物をいわせ、僅かな取っ掛りを使って垂直の壁をクライミングしていく…この場合、目指す場所は
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