軍務省のひだまり〜SS寄集め
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風景な部屋に彩りを添える装飾品とお考え頂ければ結構です」
卒のない笑みで答えるフェルナーをぎろりと睨んで、部屋の主が小さく、しかし紛れもなく絶対零度の反論をした。
「……飾るスペースに対して飾る物の体積が釣り合っているとは思えぬ。第一、手の込んだ装飾であることは認めるが、可愛らしさの欠片も感じられぬデザインだ。卿の美的センスを疑わざるを得んな」
右手でコツンと空洞になったカボチャを叩くと、この話はこれで終わりだと言わんばかりにペンを取り、手元の書類に目を落とした。
「いくらなんでもあまりの言いようだと思いますが、今日はこの一言で許しましょう。閣下、Trick or Treat !」
翡翠の目を楽しげに輝かせて両手を差し出すフェルナーに、凍てつくような眼光を向ける。10秒余りもそのまま動かず、やがて根負けしたのは上官の方であったようだ。オーベルシュタインはデスクの一番上の抽斗を開けると、高級メーカーのデザイン缶からチョコレートを取り出し、フェルナーの手に乗せてやった。
「ありがとうございます、閣下」
銀の包み紙の小さなチョコレートを弄びながら微笑むフェルナーに、オーベルシュタインは呆れたような視線を送ってから、
「悪戯も済んだ上での要求とは、私も図々しい部下を持ったものだ」
と呟いた。
「尤も……卿の図々しさは今に始まったことではない、か」
リップシュタット戦役直前、転向を申し出たフェルナーの大胆不敵な物言いを思い出して、冷徹なる軍務尚書は微かに口角を上げた。
(Ende)
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