軍務省のひだまり〜SS寄集め
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すりと笑って畳みかけた。
「閣下が滅多に吾々の企画に参加なさらないから、このような事態になるのです」
端正な顔に隙のない笑顔を貼りつかせたフェルナーを、オーベルシュタインは今一度睨んだ。そんなものを意に介する男ではないことも、重々承知してはいたが。
「そういうわけで、なるべく彼らの希望に沿えるよう、企画に修正を加えました。こちらがそのプランです」
「……どういうことだ」
手渡された一枚紙を見つめて、眉間に皺を寄せる。フェルナーが翡翠の目を輝かせて笑っているのが、どうにも癇に障る。
「御覧の通りです。『閣下と一緒に(略)』第一回から第五十回までの開催計画です。この全てに閣下がご出席頂ければ、全省員の希望が叶う計算です」
「無茶を言うな。50回も参加できる道理がないし、第一その前に夏が終わる」
苦心して作り上げた計画書を隅へ追いやられて、フェルナーはしばし首を捻った。
「そうですか。名案だと思ったのですが」
代案がないかと悪足掻きしている部下を尻目に、オーベルシュタインはは淡々と職務を再開する。
無視を決め込んだ上官に、フェルナーは図々しく問いかけた。
「代案はありませんかね。…閣下を含め、皆が楽しめる企画です。皆が、ですよ」
しつこく食い下がられて、オーベルシュタインは再度溜息を吐くと、何かを決意したように口を開いた。
「せめて500名は入る会場を手配しろ。花見会、納涼会、観月会、忘年会の4回を企画すれば不満はなかろう」
言い終えないうちにオーベルシュタインはしまったと思ったが、既に遅いことも分かっていた。部下の策略にまんまと嵌められた軍務尚書は、年4回の飲み会参加を自ら約束してしまったのである。
(Ende)
5.地上、其処も広大なる戦場
遺言を残して瞼を閉じようとすると、視線の先にぼんやりと浮かび上がる人影があった。艶やかなダークブラウンの髪と金銀妖瞳には、心当たりがあった。
「どういうことだ。なぜ卿がここにいる」
すでに唇は動かず、オーベルシュタインは思念だけでそう尋ねた。それだけで十分だと分かっていた。その人影…故ロイエンタール元帥は、生前の彼らしく冷ややかに笑った。
「水先案内人というやつだ。さすがの卿も、死出の旅路に一人では不安だろう」
かつての僚友の言葉に、オーベルシュタインが眉を寄せる。
「どうせ行き先は決まっているのであろう。この期に及んで案内が必要とも思えぬ」
卿らしい言いようだと、案内人は再度笑った。
「行き先は地獄か」
開眼している力さえ急激に失われ、オーベルシュタインは脂汗を浮かべたまま目を閉じた。
「残念ながら天上だ」
皮肉げなロイエンタールの声に彼も笑いたいと思ったが、もはや彼の筋肉は完全に統制を受付けなかった。
「私は少なくとも、戦死
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