軍務省のひだまり〜SS寄集め
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
立てていた。
上下する背中がなぜか震えているように見えて、フェルナーは一瞬息を飲んだ。きっとこの光景を忘れることはないだろうと、フェルナーは上官の肩に上着を掛けてやった。
(Ende)
3.大失態
「やれやれ、一段落ですね」
フェルナーがぐるりと肩を回して伸びをする。
「まったく、ようやくだな」
肯きながら、オーベルシュタインもつられたように大きく背中を伸ばし……。
ドスン!という聞き慣れない音が執務室に響いた。
「!?」
突如上官の姿が消え、フェルナーは立ち上がる。
「閣下!?」
消えたと思った上官は、執務机の陰に隠れていた。要するに、椅子ごと倒れ込んでいたのである。
「くっ……」
頭を打ったのか、苦しげに目を瞬かせて、オーベルシュタインはどうにか邪魔な椅子を脇へよけた。
「閣下…もう、何やってるんですか。驚かせないで下さいよ」
苦笑するフェルナーに支えられながら起き上がると、オーベルシュタインは一見平然としたまま埃を払う仕草をした。
「この椅子に安定性がないのだ。不良品として警告を出せ」
フェルナーは一瞬きょとんとしてから、笑いの発作を抑えるのに苦労を強いられた。
「仰るとおり、椅子に問題があったのでしょう」
そう言ってTV電話端末に視線を落としたフェルナーの肩は、小刻みに震えていた。オーベルシュタインは見て見ぬふりをしながら、照れ隠しにもう一度その凶悪な椅子を眺め、何やらぶつぶつと呟いた。通信を終えたフェルナーが、もはや隠すこともせず上官へ笑顔を向ける。
「閣下、警告するのは宜しいですが、この事件を口外なさってはいけませんよ」
部下の言葉に、オーベルシュタインが目を伏せる。
「無論だ」
事件はこの二名の間の秘密とされたが、不幸なことに、ミュラーによってぬかりなく仕掛けられた防犯カメラの存在を、彼らは知らなかった。
(Ende)
4.閣下と一緒に夏を乗り切ろう
「閣下」
昼の休憩を見計らって、やや声をひそめて寄って来た部下へ、オーベルシュタインは露骨に眉根を上げた。
「実は、こたびの『閣下と一緒に夏を乗り切ろう』企画の参加希望者が多すぎたため抽選を行ったのですが…」
歯切れの悪い部下へ、無言で先を促す。
「50名定員のところ、当初から1000名を超える応募がありましてね。その参加権があまりにも貴重なものになったため、当日当直予定の者や予定の入っていた者たちがこぞって応募し、総計2413名の応募。めでたく参加権を獲得した後にその権利を売却するという商売がまかり通っているのです」
対策が必要ですという部下の言葉に、オーベルシュタインは溜息を吐いた。
「下らぬな。企画そのものを取りやめれば良かろう」
にべもなく応じ、右手で追い払う仕草をする。しかし不遜な部下はく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ