第一部「吉良吉影は眠れない」
第五話「サンドイッチ窃盗犯」
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オマケ 第四話「吉良の亀B」
私はその疑問を抱いた亀すくいという場で立ち尽くしていた。
これはなんだ?金魚すくいのようなものなのか?それの対象が亀?そんなバカな。
「すまないけど、これはなんだい?」
屋台の主は答えた。
「亀すくいだよ。知らんのかい?まぁ無理もないさ、今年始めたばかりだからね。」
「ほぅ・・・今年からか・・・」
「まぁ、最初で最後だがな。」
店主は悲しそうな表情を浮かべ、私にそう告げた。最初で最後。きっとこの人は来年この杜王町から姿を消す。どんな理由であれ、これが最初で最後であると彼は私に語ってくれた。
「そうか、それで話に戻るが、これはなんだ?」
「見たとおり亀をすくうのさ。」
「どうやってだ?まさかあの紙切れのようなものですくうわけじゃないだろうな?」
店主は引きつった笑みを浮かべ、背中に隠していたそれを投げ捨てた。
「いやいや、そうじゃないさ、あんな紙切れですくえると思うのかい?」
「いや、あなた…何か捨てましたよね?」
「気にするな。まぁあれだ、これも何かの縁だ。いいぞ。この中から一匹もって帰れ。」
店主は私に対し、亀を持ち帰れといった。正直私はその気になれなかった。その理由は2つだ。まずは単刀直入に、この店主は私に対しごまかそうとしていたこと。これでは私がバカにされているような気分だ。実に不快だ。そしてもうひとつ、それは私はこの後、祭りを台無しにすることを心に決めていたからだ。私は一度決めたことはやりとげるタチだ。しかし、生涯初めて、迷うことを知った。今私は迷っている。破壊を行使するのかそれとも・・・。
「・・・仕方ない、そういうのなら受け取らないわけにはいかないだろう。」
「それでこそ、君だ。さぁ選べ。」
私は破壊を拒んだ。決断の末、私はこの店主の気持ちを優先した。今までは自分を優先的に物事を運んできたが…やめよう、深く考えれば私の正気は保てなくなりそうだ。
「そうだな、こいつにするよ。」
「ハハハ、お前、見る目がいいな!!そりゃ大物だぞ。」
「そうかい。いいのか?こいつをもらっていって。」
「おうよ、どのみち、おめえさんと会うのもこれで最後だ。なんならもっといるか?」
「いや、結構です。それじゃ失礼するよ。」
私は一匹のミドリガメを手に取り、その場を去った。これが私と亀との出会い、そして店主との出会いであり別れだった。私は一匹の亀とともに生きていくことにした。
そしてそのミドリガメは私によって亀一郎と名付けられた。それからというもの私のそばに亀という存在が加わった。それが私の亀である。
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