マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
黒の剣士と紅き死神
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長に追いつかない事だ。
――準決勝を開始します。プレイヤーは入場して下さい。
胡座を組んでいた状態からゆっくりと立ち上がる。迷いはあるが、気にしている場合ではない。
気づかなくてもいい人の事には敏感なキリトに迷いが伝わったら面白くない事になる。
意志力で迷いを捩じ伏せ、決闘の舞台へ上がる。
不適な笑みを浮かべる黒衣の剣士がそこに居た。
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一方、観客席。約10メートルの距離を置いて対峙する黒と紅の剣士。静かに佇む決闘者達の闘気は熱狂の中の観衆を沈黙へと誘い、聞こえるのは闘技場外のアルンの喧騒と正面モニタの秒読みカウントの電子音のみだ。
「…………」
脇で観戦している元気が取り柄のインプの少女ですら今はその快活な笑みを潜め、真剣な面持ちで舞台を見詰めている。かく言うアスナも2人の闘気に当てられたせいか、仮想の鳥肌が立つ感覚を自覚していた。
「アスナ……」
「どうしたの?シノのん」
2人にしか聴こえないくらいごく小さな声もやたら鮮明に聴こえる程の沈黙の中、もう片方の脇で観戦していたシノンが遠慮がちに話しかけて来た。
「手が……」
「え?……あ」
無意識の内に握り締めていたアバターの手はその圧力のためにぷるぷると震えていた。当事者でも無いのにも関わらず緊張していたのかと苦笑し、手をほどこうとするが、固く握られたその拳はそのまま固まっているかのように解けない。
「……どうしたのよ?」
「……分かんない」
不安な感じはしない。……もっと心地よい『何か』。
胸の奥から湧き上がってくる……これは、高揚感だろうか。飢えにも似た、どうしようもない衝動が手を無意識の内に縛っていた。
今やアスナの心の一部になっている、自分が『剣士』であるという意識に直接響く、彼らの『闘う意志』の波動は彼女を大いに揺さぶっていた。
「よし、大丈夫!ちょっと緊張してただけ」
「何でアスナが緊張するかなぁ〜」
ユウキの苦笑にアスナも笑って返す。
「そりゃあ、だってあの2人だよ?どっちが勝ってもおかしくないと思うし」
「レイが勝つよ!」
と、ユウキ。突然出たのろけ発言に茫然としながらもアスナは反射的に反論していた。
「キリト君だと思うな〜」
「レイだもん」
「キリト君ですよーだ」
「まあまあ……」
と、カウントが減ってきた闘技場の中、シノンが珍しくオロオロしながら仲裁に入るという光景があったという…………。
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