7部分:第七章
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であった。城の中はドイツの城によくある石造りであり廊下もまた同じであった。その上にビロードの絨毯を敷いておりその左右にはプレートアーマーやハルバートが飾られている。他には赤いシルクにこの家のものと思われる紋章まで飾られていた。見ればそれは髭のある男の首を持つ隻眼の老人であった。
「これは」
「そうですね」
役も本郷もこの隻眼の老人が誰かすぐにわかった。
「ヴォータンか」
「そしてこの首はユミルですね」
北欧神話の主神でありユミルの首は彼に知識を与える話す首だ。元々は彼の参謀的な存在であったのだがヴォータンの謀略の失敗により殺され首を切られた。ヴォータンはその首だけを生き返らせて彼の死後も知恵袋として使っていたのである。それが紋章として描かれていたのである。
「知的と言うべきですかね」
「そうだな」
役はとりあえずは本郷のその言葉に頷いた。
「しかしこのヴォータンは」
「面白いというか何というか」
二人は言外に何かを含ませていたが今はそれをあえて言わないのであった。そうして美女に案内されたある部屋の前に案内されたのであった。
「お二人で宜しいでしょうか」
「ええ、それは」
「お構いなく」
二人はその部屋の前で美女に応えた。その部屋の扉は樫の木で作られた重厚な褐色の扉であった。如何にもドイツの扉らしかった。
「それではどうぞ。夕食の時間になったらお呼びしますので」
「はい」
「それではその時にまた」
二人は美女に言葉をかけて部屋に入った。部屋は中世のそれを思わせる石造りのものでありここでの絨毯は廊下の紅とは違い黒っぽいものであった。壁には一つ大きな窓がありガラスで閉じられている。また木の窓もそこにはあった。
ベッドは二つだった。大きなベッドがそれぞれ部屋の左右に置かれている。その他にはその窓の方のところに置かれているテーブルと二つの椅子の他には何もない。質素な部屋であった。
「ここですか」
「いい部屋だな」
「そうですね」
本郷は役のその言葉に頷いた。
「悪い感じじゃないです」
「そうだな。とりあえずは休むか」
「ええ。ところで」
「どうした?」
扉を閉めた。そうしてそれから本郷の話を聞くのであった。
「あのヴォータンの紋章ですけれど」
「あれか」
先程の話の続きになっていた。役は本郷のその話を聞く。その目は静かだが真剣なものになっているのであった。
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