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エリクサー
4部分:第四章
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った。それからまた言葉を出す。
「少し早くないか?」
「だから少し早いですけれど」
 それをまた断る。
「夕食にでも。どうですか?」
「確かパンだったな」
「ええ」
 これはドイツにいるから当然と言えば当然であった。
「それとソーセージに」
「ザワークラフトだな」
 キャベツを刻んだものを酢漬けにしたものである。ソーセージと並ぶドイツ料理の定番でありこれと黒パン、先に述べたソーセージにジャガイモで大体ドイツ人の食べ物の基本が揃うと言われている。
「瓶詰めのやつですけれど。どうですか?」
「それはまだ早いな」
「少しどころじゃなくですか」
「私はそう思う」
 こう言って本郷の言葉を退けるのであった。
「それよりもだ」
「歩きますか、まだ」
「目はつなげてある」
 役はふとした感じで述べてきた。
「式神達とはな。だから城が見つかればすぐにわかる」
「すぐにですか」
「そうだ。むっ」
 そうして役は死神の一つを通して何かを見たのであった。
「あったぞ」
「どちらですか?」
「あちらだな」
 指差したのは二人が歩いている道をそのまま進んだ方角であった。
「丁度いいと言うべきかな」
「そうですね。そのまま歩けばいいだけですからね」
 本郷も今の役の言葉に満足した顔で頷くのであった。
「じゃあこのまま歩いていきましょう。それで」
「距離か」
「そうです。どの位ですか?」
 それを役に対して問うのであった。
「距離は。歩いてどの位でしょうか」
「一時間といったところだな」
 役は少し考えてからこう本郷に答えた。
「それ程距離はないな」
「そうですね。じゃあ行きますか」
「うん。見たところよい城だ」
「それは何よりです。それで」
「それで?」
「中に何もいないことを祈りますよ」
 本郷は少し笑って言うのであった。この言葉も出される理由があった。
「ドイツとお城とくれば」
「そうした手の話は多いな」
「実際にはまだお目にかかったことはないですけれどね」
 ドイツには幽霊話も多い。森と城に囲まれた国でありそうした話が自然と多くなるのだ。他にはこれまたドイツには多い湖のほとりの幽霊話も多い。ドイツに匹敵する程幽霊話の多い国といえば他にはイギリスであるがこの国もまた森と城が多い国だ。ただドイツは湖だがイギリスは霧である。そうした水が幽霊を生み出すもとの一つになっているのかも知れない。
「若しいるとすれば」
「正しい存在ナあらばよし、だがそうでなければ」
「一戦交えるかも知れないですね」
「そうならないことを祈る。しかし古い城だ」
「古いですか」
 役の言葉に対して問う。
「築城してどの位ですか?」
「千年といったところか」
 役は目を細めて答えた。どうやら式神を通してま
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