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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-48異なる想い、重なる願い
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ありません。本当はもっと前に、罪を犯す前に、私が止めたかった。でも私の言葉では、もうあの方を止めることはできないのです。苛められては守られるばかりだった私には、力づくで止めることもできないのです。だから、その力を持った誰かに。世界を守りたいと願う誰かに、あの方を止めて欲しいのです。……きっともう、生きている限り、あの方が止まることは無いから。犯した罪が消えることも無いから、それが必要なことならば。あのひとの命を奪ってでも、どうか……あのひとを、止めてください……」
ロザリーは悲しげに微笑み、その瞳から涙が零れる。
少女はその微笑みを見つめながら無意識に手を差し出し、涙を掌で受け止める。
紅く輝く涙は少女の手の中で雫形の宝石を形取り、そして音も無く崩れ去った。
その様子を見届け、ロザリーの微笑みに視線を戻し、呟く。
「シンシア……」
「……え?」
「……ロザリーさん。……シンシアを、知ってる?あなたに……少し、似てるかも」
「……いいえ。……もしかしたら、知っているかもしれませんが。エルフは元々、個人の名を持ちません。私のこの名も、あの方に付けていただいたもの。そのシンシアさんが私と同じエルフだとして、元々その名を持っていたわけでは無いでしょう」
「そう……」
また俯いた少女に眉を下げ、少し考えたのちにロザリーがまた口を開く。
「……人の足では踏み入れぬ地に、エルフの隠れ里があります。
逸
(
はぐ
)
れて迷い、道を見失った私には、もう戻ることはできませんが。シンシアさんがエルフならば私と同じく、その隠れ里から来られたのかもしれませんね」
「そう、なのね。……ありがとう」
顔を上げて礼を言う少女に、ロザリーが優しく微笑む。
「いいえ。話を聞いて頂き、ありがとうございました。申し上げた通り、私の覚悟はできていますから。みなさんはみなさんの思う通り、成すべきことをなさってください」
「うん。……ごめんなさい」
「いいえ。ありがとうございます」
わかっていても、失えばきっと悲しいから。
あのひとの守りを失えば、このひともどうなるかわからないから。
それでも倒さないわけにはいかないから、少女は謝る。
それが少女の望みでも、辛いことをさせてしまうには違いないから。
望みを叶えに行く少女に謝るのは違うから、自分には出来ないことを成しに向かう少女に、ロザリーは礼を言う。
そして少女は背を向けて去り、ロザリーはその背中を見送って。
運命に翻弄されるふたりの女性の歩む道は、暫しの邂逅を終えてここで永遠に分かたれる。
違う想いを抱き、同じ願いを叶えるために、祈り続けるひとりと、戦い続けるもうひとりに。
塔を出た一行は、村の広場で再び話し合う。
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