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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
Half Point
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……サチの声が録音されてた。……何と言うか、少しだけ、心が軽くなったような気がしたんだ。……マサキが一層のボス戦前、俺のことを許してくれたときみたいに」

 徐々に空を覆い始めた夜の蚊帳に浮かぶキリトの表情が、仄かに柔らかみを帯びる。

「……それで、俺、まだあの時のお礼とか、そういうの何もしてこなかったから……。だからその、マサキには感謝してるって言うか、次はこっちの番って言うか……あぁと、その、だから……!」

 感情の抑えが効かなくなったのか、それまで俯き加減だったキリトの顔が一気に上げられ、マサキの両目を真正面に捉えた。
 一度、大きく深呼吸。

「――だから、俺はマサキに立ち直ってほしい。最初にマサキを見捨てた、ビーターの俺が言うことじゃないのは分かってるし、今の俺だって似た様なもんだけど……。それでも、本気でそう願ってる」
「…………」

 不器用な、しかしひたむきな視線に晒されて、マサキは言葉を返すことが出来なかった。数秒が経って、キリトが何とも複雑な表情で部屋を出た。

「……繋がりを求める……心……」

 夢の中で飲み込めなかった言葉が口から飛び出して、マサキは同時に(うず)きだした胸の辺りを押さえるように掴んだ。疼きはまるで今の言葉と共鳴するように強さを増して、そしてそれを、同じ場所で生まれた痛みが更に強烈に否定する。

「俺は――」

 ――どうしたいんだ。
 そう続けようとして、途中で止めた。
 辺りに舞い降りた夜の蚊帳も、窓をカタカタと揺らす冬の夜風も、その問いには答えなかった。

 様々な想いが渦巻く中、アインクラッド第五十層フロアボス攻略戦が、今、その幕を開けようとしていた。

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