第十三話 〜大将着陣〜
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洋循様に無言で鋭い眼光を突き付けられて再び沈黙する。
そして豪統様が沈黙したのを確認すると、洋循は最後の仕上げに入る。
俯く豪帯様の耳元に顔を近づけ、そして...。
『...』
『...ッ』
何かを呟かれた。
`...お主が出世せねば、豪統殿はずっと洋班にいびられ続けるぞ?`
それがあの男が僕に言った最後の言葉だった。
...ごめんなさい。
僕の戦への参加は決まった。
それが結果だった。
僕は返答を出してすぐにこの自室に逃げるように帰ってきていた。
返答を出した時の父さんと凱雲の顔は見ていない。
だが、きっと呆れと怒りと悲しみ、蔑みを合わせたような表情をしていたに違いない。
もう、当分二人の顔は怖くて見れない。
...ごめんなさい。
無いと思われた父さん達との初陣への期待や洋班と対等に戦える事への願望は確かにあった。
そしてその洋班に遅れを取らない自信もあった。
だが、それ以上に父さんがあいつらにいびられるのが我慢できなかった。
父さんがこれからずっとあいつらに、しかも自分の知らない所でいびられるその姿を想像するのが辛かった。
僕が守らなきゃ。
それが僕の答えだった。
コンコンッ
『...ッ!』
急に部屋の戸が叩かれる。
心臓が跳ね上がった。
咄嗟に布団の中に隠れる。
...父さんだ。
きっと父さんが何か言いに来たんだ。
...怒られる。
僕は布団の中で震えた。
ガチャ
『...入るぞ』
嫌な予感は当たってしまった。
その声は紛れもなく父さんの声だった。
頭の中が真っ白になる。
どうしよもなかったんだ。
こうするしかなかった。
怒られる。
でも僕がやらなきゃ。
そんな言葉が頭を駆け巡る。
『...』
『...ッ』
静かな部屋。
どちらとも言葉を発しないまま方や部屋の戸の入り口で、方や布団の中で震え、動かない。
二人が二人ともその距離感を図り兼ねている違和感のある空間がより一層体感時間を長く感じさせた。
ギシッ
『...ッ!』
だが、その静寂は僕のいる寝床の木が軋む音によって消え去った。
どうやら父さんが僕が布団にくるまって震えている横で空いている寝床の場所に腰をかけたようだ。
『...』
『...』
だが、その腰をかけた場所は僕からは一番遠い寝床の端の端だ。
それに気付いた時何故か震えは収まり、自然と冷静さを取り戻す。
何故か。
それはきっと父さんのその時の対応がどうにも弱々しく、決して憤怒を宿した者の行動ではなかったからだろうと覚めた頭で理解する。
そしてそうとわかると今度はまた別の感情が芽生えてきた
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