第十三話 〜大将着陣〜
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の試みは失敗に終わった。
『...凱雲よ』
『...』
『その手を離せ』
『...』
凱雲が黙り込む。
帯の腕は今だに握られたままだ。
『...貴様、私に逆らうのか?』
『...』
一触即発の空気。
どちらも退かぬという意思がこちらまで伝わってくるようなピリピリとした空気。
『...凱雲』
そんな空気を終わらせたのは。
『帯の腕を離せ...』
私だった。
...してやられた。
まさかさっきの流れからこんな事になろうとは。
私は豪統様の命を苦渋な思いで遂行した。
『...え、え?』
突然頼りの綱を無くした豪帯様はその不安を押し殺す事ができずに視線を泳がせる。
...申し訳ございません。
今の私ではどうすることもできません。
私はすがるような眼差しを向けてくる豪帯様から目をそらした。
『して豪帯よ』
『...ッ!?』
洋循様に声をかけられた豪帯様がその小さな身体をビクリと震わせた。
それを目の当たりにして胸が張り裂けそうになる。
『お主、戦に出たいのか?』
『...』
『正直に申せ』
この狡猾な男の狙いは最初からこれだったのだ。
ここに来てから終始豪統様を周りに聞こえるように貶めていたのは紛れもなく洋班の失態を有耶無耶にする為だ。
そしてここまで形振り構わずに対面を気にする男なのだ。
きっと名声や名誉、評判というのがこの男にとっては何よりも大切なのだろう。
そして今目の前にいるのは自分の息子と歳の近い人間。
もし同じ戦場でその同期の人間よりも自分の息子が手柄を立てれれば周りへの掴みにもなる。
しかも、皮肉な事にその相手は他ならぬ豪統様の子だ。
豪統様自身が戦乱の中で挙げた手柄の数が少なくない分、尚更洋循様にとってみれば美味い話しなのだろう。
豪帯様が口を開く。
『...僕は』
そこで一旦言葉を飲み込む。
そして伏せた顔を少し上げて豪統様に視線を向ける。
『...ッ』
当然、豪統様は必死な表情で訴える。
乗せられるなと。
『...』
がしかし、豪帯様はそれを見たうえで申し訳なさそうに再び俯かれる。
...ダメか。
『僕は...別に...』
しかし、豪帯様は踏み止まる。
豪統様と私の顔に少しばかりの安堵が戻る。
『洋班にやられっぱなしでいいのか?』
『ッ!!』
だが、洋循様はここに来て更に豪帯様を揺さぶりにくる。
『息子が手柄を立て続ければ、お主との差は広がる一方じゃぞ?そうなれば豪統殿もさぞ肩身狭い事じゃろうなー...』
『...ッ』
『よ、洋循様。そのあたりで...ッ!?』
豪統様が我慢できずに止めに入ろうとするが、
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