第十三話 〜大将着陣〜
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。
それはさながら駄々をこねる童子を大人が力強くで引っ張り出してきたようだった。
『...帯』
私はそれを見て項垂れていた。
『洋循様!この者をどうしますか?』
『うむ、離してやれ』
『え、よいのですか?』
『よい。その童子は豪統殿の息子殿であるようだからな』
『は、はぁ...』
そう洋循が言うと兵士は渋々といった感じで帯を降ろす。
『...童子じゃないし』
その途中でボソッと帯が呟くのが聞こえた。
『で、その息子殿はあんなこそこそと何をしていらしたのかな?豪統殿』
洋循様がこちらに目を向けてくる。
しかしその目は愉悦に浸るようなねっとりとした笑みを零していた。
再び私の背中に緊張がはしる。
『いえ、私には思い当たる節はございますが決して疚しい事では...』
『私と豪統殿との会話の中で自分の息子に何か盗み聞きをさせる程の事でもありましたかな?はっはっは』
『い、いぇ!盗み聞きなんてそんな...』
『どうだか...』
再び口調があの蔑みに満ちた口調に変わる。
『さしずめ`自分の罪`を逃れる為の言質を私から引き出しといて、それを後後そこの息子を証人に見立てて街にでも流すつもりだったのだろう?』
『ち、違います!そのような事決して!』
『まったく。卑しい人間の考える事程醜いものはございませんな。』
『違う!!』
違う。
その渾身の込められた言葉はより一層辺りに響き渡り、そして場を一瞬にして静かにさせた。
しかし、それを叫んだのは私ではなかった。
『父さんは...父さんはそんな卑怯な真似はしない!』
そう。
その言葉は私ではなく、帯によって叫ばれていた。
『僕は...僕はただ村に帰る為にここを通っただけで父さんは関係ない...』
今度はさっきとは打って変わって急に萎らしく言葉を紡ぎ出していく。
『村とな?』
『はい。村でございます』
そしてそんな帯に変わり凱雲が前に出た。
『豪帯様は見ての通りまだ`成人`すら達していない身でございます。ですからこれからの戦には参加できぬ故、内地の村へ避難していただく事になっておりました。多分この場に居合わせたのも偶然でございましょう。誤解を招いてしまった事、誠に申し訳ございません』
そう一息に言うと凱雲は深々と頭を下げた。
帯の歳については嘘が混じるものの、見事に現在の状況の説明とそれに伴う洋循様への配慮をさり気なく済ませた凱雲の完璧な対応に呆気にとられながらもそれに合わせて頭を下げる。
本来なら凱雲の言葉を私が言うべきなのだろうが...。
『ふむ...』
流石の洋循様も納得せざるを得ないのかさっきまでの愉悦の表情がすっかり不満気な表情へ変わっていた。
『
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