第十三話 〜大将着陣〜
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りが始まる。
これで何度目になるのか。
豪統様は豪帯様が絡むとどうにもこう...女々しくなられる。
今に始まった事ではないが。
私は表情に出さないように聞き耳だけは立てたまま前方遥か彼方を見た。
『...ん?』
『しかし、私はこんな情けない姿を見せつづける訳にはいかない。そうなれば他ならぬ帯自身に...』
『豪統様』
『...思いをさせるばかりじゃなく再び同い年の洋班様にいびられて...』
『豪統様』
『...ん?どうした?』
『見えたようでございます』
『...来たか』
完全に自分の世界に入り込んでいた豪統様に呼びかける。
それは正面に広々と広がる土砂ばかりの荒野とその端に広がる青々とした木々の隙間から時折見せる険しい岩肌を見せる山々の景色の中に微かな砂埃を見せる一団の姿が見えたからだ。
『...』
僕は父さんと喧嘩別れした後、部屋の荷物を整えて北門へ向かっていた。
理由は自分が数日前までいた村へ戻る為だ。
しかし、旅支度と言うには余りにも寂しい様相だった。
腰に差した一振りの得物と数少ない荷物を背中にかけた、ただそれだけの準備。
それはこの関に来た時と同じ量の荷物。
本当ならもっと荷物が増えているはずだった。
この関に来る前は余分な物は全て置いてきた。
理由はただ物が無かった事もあるが、それよりもこの関での生活を一つの自分の中での分岐点にしたかったからだ。
自分に必要なもの、自分の思い出のものは全てここで手にいれるつもりだった。
しかし、それが叶う事は無かったようだ。
それを持って行く荷物を整えている時に気付いて思わず泣いてしまっていた。
我儘なのはわかってる。
でも、それでもこの感情は抑える事ができなかった。
自分では今まで気付かない振りをしていたみたいだが、どうやら僕はどうしようもないくらいに寂しがりやだったようだ。
今になってとてつもなく寂しいという感情が心の中に渦まきはじめる。
『...邪魔だよね』
そして何より一番辛かった事は、今までずっと父さん達の役に立ちたくてここでの生活を夢見てきて、それが叶ったと思った矢先のこの帰省である。
役に立たない。
そればかりか役に立ちたいと思いここにとどまる事すら今の父さんや凱雲を困らせる事になる。
それだけはいけない。
それではここへ来た意味がない。
僕は自分に言い聞かせた。
『...ん?』
そうこうしているうちに北門付近に着く。
しかし、そこである異変に気が付く。
『...なんで?』
さっきまで北門へ続く大通りではなく、北側の城壁沿いの道を歩いていたせいで気がつかなかったが、北門付近につくと普段の喧騒は無く、人通りすら綺麗に無くなっていた。
しかし、理
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