第四十五話 俺は宇宙一のヘタレ夫だ
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ら一緒には居られないと改めて思った。この人の前では感情が溢れてしまうから、いつか酷い事を言ってしまいそうだから……。
ラインハルトとジークが困惑した表情を浮かべている。この二人を私が縛ってしまった、狂わせてしまった。あの人は私の所為じゃないと言ってくれた。でも私が原因で有る事は否定できない、そこから眼を逸らすのは正しい事ではない……。
「姉上、これからどうされるのです?」
「そうね、住むところを決めなければならないし領地も見て回らなければ……、忙しくなるわ」
「……姉上がグリューネワルト伯爵夫人に戻られたのは知っています。しかしお金は有るのですか?」
“伯爵夫人”、その言葉に胸が痛んだ。あの人に“伯爵夫人”と呼ばれた時、一瞬何の事か分からなかった。自分の事だと分かった時どうしようもないほど動揺している自分がいた。どうして“アンネローゼ”、“お前”と呼んでくれないのか……。そう思っている自分がいた。
三つも年下の夫に“お前”と呼ばれる、最初は抵抗を感じたことも有る。でも“伯爵夫人”、その言葉のなんと余所余所しい、寒々しい事か。それに比べれば“お前”という呼びかけはなんて温かみのある呼びかけなのだろう。私は“お前”と呼んでくれる人を失ってしまった。私はもうあの人にとっての“お前”では無くなってしまったのだ。私は一人になってしまった、他人になってしまったのだとあの時思った。
「大丈夫よ、あの人が二百万帝国マルクをくれたから。金銭面で心配はいらないの」
二人が驚いている。
「私はもう大丈夫なの、誰にも束縛されていないし不当にも扱われていない。だから、貴方達も自由に生きなさい。私のためにでは無くて自分のために生きて。良いわね?」
二人が困惑したように頷いた。
「それと当分私達は会わない方が良いと思うの」
「姉上!」
「アンネローゼ様!」
「それぞれが自分の道を見つけ歩き始めるまでは会わない方が良いわ、そう思うの」
ラインハルト、ジーク、私から解放してあげる。だから自由に生きなさい。そしてあの人も自由に生きて欲しい……。ヴェストパーレ男爵婦人が頷くのが見えた……。
帝国暦 488年 9月 22日 オーディン ヴァレンシュタイン邸 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
一人減っただけで随分と広く感じるな。それになんとも寒々しい。部屋に温かさが感じられない、こんな家だったかな? なんか昨日までとは別な家に居るような感じがする……。広すぎるな、売り払って官舎に移るか……。その方が良さそうだな。
アンネローゼは夕食の用意をしてくれていた。最後の手料理だな、味わって食べないと……。ニシンの塩焼きに粉ふき芋の付け合わせか、それとカボチャのクリームスープ。ニシンの塩焼きは温めてからレモン汁をたっぷり
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