25部分:第二十五章
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見上げた。上には黒く暗い天井が広がっている。木造のその天井はあちこちが古くなっており蜘蛛の巣も見える。随分な古さだった。
「博士も辛いですかね」
「どうだろうな」
本郷のこの言葉にはまた首を横に振る役だった。
「そこはわからない。しかし我々は何もしない」
「それじゃあ」
「帰るとしよう」
ノートを閉じてそのうえで踵を返すのだった。
「全てはわかった。後はもう何もない」
「ですね。俺達が何をしなくても」
「話は終わる。だからだ」
「ええ、それじゃあ」
こうして話は終わった。少なくとも謎は解けた。謎がわかった二人は何事もなかったようにハインリヒの城に戻った。そこにはやはりメイドや執事達がいた。二人は彼等に今の自分達の部屋に案内され部屋に入ってから言葉を出すのであった。
「あの執事やメイドさん達は」
「完全に人形だな」
こう答える役であった。
「アンドロイドというやつか」
「そうですね。あれはね」
本郷もまた役の言葉に頷くのであった。しっかりとした顔で。
「そうですね」
「何故造っていると思う?」
役はそれについて本郷に問うのだった。
「あの人形達は」
「ひょっとしたらですけれど」
本郷はあらためて考える顔になった。そしてその顔で役に答えるのであった。
「妹さんはあと一年ですよね」
「そうだ」
「五年ありました」
今度は五年という年月についてあらためて考えるのだった。
「五年あればその間に」
「より精巧な人形を造ることができるな」
「例えばですよ」
考える目が険しくなる。その険しさは不気味なものを感じていたからだ。
「若し妹さんの人形を造ろうと思えば」
「できるな」
「エリクサーを造れるような人です」
このことが非常に大きかった。エリクサーは錬金術の極意の一つである。これを造られるとなればありとあらゆることに対するかなりの素養がなければ無理な話である。
「やろうと思えば。違いますかね」
「そうだな」
役は暫く考える目になってから本郷の言葉に応えた。
「そう考えることもできるな」
「そうですよね。それでは」
「うむ。有り得る」
役もまたその可能性を認めたのだった。
「このことはな」
「だとしたら最初から完全でないエリクサーを造ったのは」
「そうだな」
また言う役であった。
「最初からそれを考えてか」
「深いですね、どうにも話が」
本郷は一旦服を脱いでいた。そのうえでズボンだけになりそこからガウンを羽織っていた。白い大きな、彼に実によく似合うガウンであった。
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