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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第31話 「文句があるなら、宰相府までいらっしゃい」
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の意思で行動することができません。
 本気で皇太子殿下が排除する気になれば、いいえ、気にも留めずにいるだけで、たやすく死ぬ。
 それぐらい弱い存在なのです。
 年齢の事だけでなくて、後ろ盾やその立場や境遇など、もです。
 皇太子殿下が、後ろ盾になって下さっているお蔭で、生きながらえているようなもの。

「守ってあげたい。そう思います」
「ラインハルト」
「この子だけじゃありませんが」
「そうですね」

 ■ノイエ・サンスーシ ラインハルト・フォン・ミューゼル■

「た〜す〜け〜て〜」

 ベーネミュンデ侯爵夫人がドレスを持ったまま、追いかけてくる。
 皇太子のせいだ。
 絶対にそうだ。
 いったい何を言ったんだ。

「さあ〜ラインハルト。あなたの女装趣味の手伝いをしてあげますからね」

 すっごくいい笑顔だ。
 むかつくー。
 俺は着せ替え人形ではないぞ。
 そんな趣味はないんだー。

「またまた〜」

 分かっていますよ。と言いたげな笑みを浮かべる、ベーネミュンデ侯爵夫人。
 それは誤解です。
 誤解なんですー。

「かわいいでしょ? この二重のボックス・プリーツを施した襟元のフリル」

 肩を包むケープも用意してありますからね。という笑顔がにくいー。
 どうしてこうなってしまったんだ……。
 やはり、奴の所為だ。
 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム。
 奴の仕業なのだ。

「ちゃんと、アンネローゼさんの願い通りに、用意してあげたんですから着ますよね?」
「あ、姉上ー」

 なにを言ったんですかーっ!!
 まさか姉上の仕業だとは、思ってもいなかった。
 思わぬところに敵はいるものなのだと知った。
 十二才のことだった。

「がぁ〜っでむ!!」

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