第九章
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「人間をな」
「いいんですか?」
「何か悪いのか?」
犠牲者が出ても動じない池上だった。
「不法漁民じゃぞ」
「それはそうですが」
「あそこは日本の領海内じゃ、そこで他国の人間がうろつく方がな」
問題だというのだ。
「だからよいわ」
「そうですか」
「何、食事の後でレースは再開される」
だから何の問題もないというのだ。
「よいな」
「ううん、まああそこで漁をするのは悪いですけれど」
「気にするな、抗議なぞ知ったことではないわ」
本当に何の意にも介さない池上だった、そして倉田もだ。
食い殺される彼等を見てもだ、池上と同じくテーブルと椅子に座ったまま梨を食い友禅として後ろに控える安曇さんに話した。
「いい梨で」
「そうですね」
見れば安曇さんも梨を食べている、隣の坂上君も今はそうしている。
その中でだ、こう話すのだ。
「レースは一時中断してるわね」
「食べ終わってからなんですね」
「そういえばあの恐竜に今日は餌をあげてなかったわ」
だから丁度いいというのだ。
「そうしてね」
「いいんですか?人死んでますけれど」
安曇さんも常識人だ、それで話すのだった。
「それも他国の人ですけれど」
「不法漁民でしょ、いいじゃない」
死んでも構わないとだ、倉田は画面にリアルタイムで恐竜に食い殺されている彼等を見つつそれで話していく。その顔はまるで犬が餌を食っているのを見ている様な顔である。
「別にね」
「だからなんですね」
「ええ、いいわ」
一向に構わないというのだ。
「そうでしょ」
「そういうものですか」
「じゃあいいわね」
「このままですね」
「レースの結末まで観ていましょう」
こうして倉田も平然として人が食い殺されるのを見ていた、自分達が復活させた恐竜達をだ。そうしていたのである。
レース自体は同時にゴール、その砂丘の海に着いたので引き分けに終わった。今回もそれに終わったのである。
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