第五章
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「わしはああした社会主義を気取った腐った連中は大嫌いじゃ」
「だからですか」
「うむ、何があっても気にすることはない」
いつも通りの言葉であった。
「それはよいな」
「何かいつも通りですね」
「ははは、わしはわしじゃ」
池上英世だというのだ。
「ダンディに戦い勝つぞ」
「正面からですね」
「そうして勝つことこそが勝利じゃ」
本当に意味でだというのだ。
「だからな」
「そうされますか」
「うむ、今からな」
こう話してそしてだった、池上は己の戦艦の戦いを見守るのだった。
そして倉田の方もだ、飛行船の下の人が乗る部分、ミサイルや空中魚雷を出すものが見える場所から目の前にある空中戦艦を見て己の後ろにいる安曇さんに言った。
「戦艦ね、けれどね」
「博士の開発されたこの飛行船はですね」
「そうよ、ただの飛行船ではないわ」
こう自信を持って言うのだ。
「何しろ普通の飛行船はヘリウムで飛ぶけれどね」
「この飛行船は超科学で飛んでいますから」
「そうよ、飛行船の燃料の部分にはね」
普通の飛行船のだ、
「武器が搭載されているから」
「巨大レーザーの主砲、しかも十一連装のものが」
「火力は戦艦にも負けないわ」
決して、だというのだ。
「今度こそ私が勝つわ」
「頑張って下さい」
安曇さんもにこりと笑って倉田に言う、そうしてだった。
両者は空中で激しい砲撃戦をはじめた、双方レーザービームを放つ。
光と光が炸裂する、戦艦も飛行船も大きく揺らぐ。
しかしそれでも双方まだ空にある、池上は揺れようとも空にその勇姿を誇る戦艦の中でこう言ったのだった。
「ふふふ、この空中戦艦を沈めるにはな」
「やや不足ですか?」
「いや、大いに不足じゃ」
こう坂上君に返す。
「あの程度ではな」
「そうなんですね」
「わしの戦艦は違う」
博士が開発したからだというのだ。
「その戦艦を並のレーザーで貫けるか」
「けれど博士」
坂上君は己の師匠にあえてこう言った。
「若しもですよ」
「若しも。何じゃ?」
「破片でもビルの上に落ちれば」
その時はどうなるか、坂上君が言うのはこのことだった。
「大変ですよ」
「政党本部が崩壊じゃな」
「はい、そうなったらまたニュースですよ」
「だからそれがどうしたのじゃ」
本当に惨事には平然と返す池上だった、何も動じてはいない。
「ニュースになるのはよいことではないか」
「科学者にとってはですね」
「その通り、悪名でも何でもな」
有名になってこそだというのだ。
「それでよいのじゃ」
「まあ今更博士の評判は」
悪名高いという言葉がそのまま当て嵌る、それが池上だ。尚このことは倉田にもそのまま当て嵌ることである。
「ですけれどね」
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