20部分:第二十章
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それは一枚の黄色い紙の札であった。
「土の中を調べるんですね」
「そうだ。おそらく謎はそこにある」
役は答えた。
「この中にな」
「ですね」
本郷にも役がこれから何をしようとしているのかわかった。だからこそ頷くことができたのであった。
「それで。あると思いますか?」
「君はどう思うか」
役は本郷の今の問いには直接答えずに逆に問い返すのであった。
「あると思うか」
「役さんと同じですね」
それに対する本郷の返事はこうであった。
「多分ですけれどね」
「そうか」
「ええ。あくまで多分ですけれど」
下を見下ろしながら答える。その謎がある下を。
「そうか。なら余計に調べてみる必要があるな」
「はい」
本郷はまた頷いてみせてきた。
「それじゃあその札で」
「そうだ。さて」
札を一振りさせるとそれが黄色い小鬼になった。小鬼はそのまま地の上に降り立つと中に沈んで行った。役はそれを見ながら言うのであった。
「どうやら中には」
「ありました?」
「いや」
本郷の言葉に首を横に振る。今彼は自分の目からものを言っているのではなかった。他のものから見ているものを語っているのであった。
「ないな」
「そうですか。やっぱりそうなりましたか」
「うん。予想通りだが」
「若い女性の骸はなしということで」
「少なくともこのリンデンバウム家の墓にはなかった」
答えはこうであった。
「そういうことだ。では行くか」
「そうですね。何もないとなると」
本郷も頷く。それがわかったのは大きかった。二人はそれを確認してから墓地を後にした。その途中に立ち寄った公園のベンチに並んで座りながらまた話をするのであった。
「何かこれで話がかなり限られてきましたね」
「そうだな」
役は本郷の言葉に答えた。
「それもかなりな」
「亡骸がないんですからね」
欧州は土葬が主である。だから墓の下には亡骸があるのが普通なのだ。しかしそれがないということは明らかにおかしなことであったのだ。そういうことであった。
「ということは」
「しかし死んでいるのは間違いないな」
「ええ」
そのうえでこのことが語られる。墓石には彼女の名前がはっきりと書かれていたのだ。しかもあのレストランでのおかみの言葉だ。話は矛盾していると言える流れにもなっていた。普通ならば。
「どういうことだと思うか」
「けれどエルザさんはおられました」
本郷は言う。正面を見たまま。その先にはのどかな緑の森があったが今彼はそれを見てはいなかった。他のものを見ていたのである。
「あの城に」
「そうだ。しかし」
ここで役はもう一つの証拠を出してきた。
「式神には何の反応もなかった」
「生者の反応がですよね」
「そう。何の反応もな」
城に
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