番外編
Trick or Treat!
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そろった歯を出してキラキラとした笑顔を見せた。
その言葉に内心ドキドキしていた。初めてだ、こんなの。
そして彼女は、手の甲をこちら側へ突き出す。手を取れば、そのまま舞踏会へのエスコートが始まる。
「あ」 ――僕は自分の手にはめられたものが、少女の手を取るのにふさわしくないことに気が付いて、戸惑った。
そうこうしていると、痺れを切らした彼女が僕の手を手袋から引っ張り出した。
「こうしていれば、手がつなげるでしょ」
彼女はそっぽを向きながら、なんだか不器用に僕の手を掴んだ。
「どうせ舞踏会なんて行ったことないんでしょ? やっぱり私が連れてってあげるんだからねっ」
勝ち誇ったように笑い、そう言うと強引に手を引っぱりながら彼女は歩きだす。
僕の早まる鼓動をよそに、体はゆっくりと、どんどん前へ進む。その光景をみんなが見ているような気がする。
顔の熱っぽさ、手の感触の中で頭がボーっとしていた。
「そういえば」 ――僕はあることに気がついて、ふとした瞬間に意識がはっきりする。
「舞踏会って、大人しか行けないんじゃなかったっけ?」
僕たちは、まだ子供。
「じゃあ、約束ね。大きくなったら、その時は連れてってね」
彼女は当たりまえかのように言うと、当たりまえのように笑った。この笑顔を僕は、その時も覚えているだろうか。その時になって見ないとわからないけど。
「……うん。約束するよ。大人になって、またここで会えたらね。その時覚えていたら連れてってあげる」
僕は少し考えて約束をしたつもりだったけど、彼女は少し不満だったみたい。
「絶対よ?」
「うん……多分。僕、その時はもっとカッコいい服着てくるね」
なんだか、僕はおかしなことを言ったみたい。それから一緒に、僕も笑った。
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