番外編
Trick or Treat!
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「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ?」
となり町から一人でやってきた僕に、最初に声をかけてきたのは魔女の格好をした女の子だった――今夜はハロウィン。街灯と燃える火が石畳を照らすなか、切り裂き魔の仮装をしていた僕は彼女と出逢った。今宵限りの舞踏会に、街がさざめき始めた頃だった。
「な、何を。ぼ、僕の方が強いんだぞ!」
ほうきで戦いの構えを見せる少女に対し、僕はすかさず爪を出す――大きくてボロボロな、皮製の手袋に付けた爪。といっても糸きり用の刃を改造しただけなので、少々格好悪い。
「うるさい。何そのカッコ。かっこわる〜い」
その一言で僕は既に負けたような気がして、無駄な抵抗はやめた。確かに僕の格好は悪い。はっきり言ってダサい。ぶかぶかのハットにだぼだぼのジャケット。父さんのおさがりだからだ。
それに比べて彼女は……くやしいが、可愛かった。今までこんなに可愛い子にはあったことがない。
薄い桃色の髪を二つ、赤いリボンでお下げに結っている。その髪はこれ以上はないって程に長い。紫色のマントに、同じ色のとんがり帽子。その先には流星のチャームがキラキラと、七色に光を反射しながら揺れている。
そしてその瞳は、赤い。まるで魔力を秘めた石のようで、深いその輝きに吸い込まれそうだ。
「なにジロジロ見てんのよっ!」
彼女の声で我に返る。頭一つ分ほど僕より小さな彼女は、頬を赤らめながらこちらを上目づかいに睨んでいた。
僕は後ずさりながらも彼女のその表情に密かに見とれていた。
「もうっ! 聞いてんの!?」
僕が返事に困っていると、彼女はさらに向きになって突っかかってきた。
しばらくそのまま圧倒されていると、彼女は落ち着いた表情になった。
「……あんた、名前は?」
彼女の顔がさっきより赤いのは気のせいだろうか。そして僕の顔も、熱くなってきたような気がする。顔だけじゃない。全身から熱気を発しているような気がする。
「ぼ、僕はジャック……切り裂きジャックだよ」
何とか声を振り絞ったけど、彼女の思いとは違ったらしい。顔がしわくちゃに歪んでく。
「仮装の名前はわかってるわ! 私が知りたいのは、あなたのな・ま・え!」
どうやら彼女は勘違いをしている。僕の名前は本当にジャックなんだ。でも……信じてもらえるかな?
「だから、僕の名前はジャックなんだよ! ……それに。人に名前を聞く前に、まずは自分から言うもんじゃないかい?」
少し言い方が悪かったかな? 彼女はふくれっ面になった。
「悪かったわよ。……私の名前はレナ。ねぇジャック。私、可愛いでしょ? だから、舞踏会に連れてって?」
彼女は僕の心が読めるのだろうか。彼女は綺麗に
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