2部分:第二章
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を妖怪だと昔の人々は言っていたのである。実際のところは自然現象に過ぎないのであるがそう言われてきたのである。これがブロッケン山を有名にもしたのである。
「それは」
「そうですね。残念ですけれど妖怪じゃないです」
本郷は楽しそうに笑って言う。
「妖怪だったら俺達の仕事になっていたんですけれどね」
「今は仕事の話はいい」
しかし役はそれはいいとした。
「ただでさえ今回の仕事は大変だったんだからな」
「そうですね。濡れ女でしたから」
「ああ」
上半身は美しい女であるが下半身は何百メートルもある妖怪である。その長い尻尾で人を絡め取りその血を吸って殺すのである。水辺や海に出る妖怪である。
「巨大っていうか。俺も危うく血を吸われるところでしたし」
「君は迂闊に出過ぎだ」
役は本郷に顔を向けて注意する。
「迂闊に出れば死ぬ。何度も言っているが」
「いや、俺は前に出るのが仕事ですし」
しかし本郷は笑って言葉を返すのだった。何度も言われているといっても反省している様子は全くない。それが実に似合っているのも困ったものであった。
「果敢に出ないとね」
「それでもタイミングがある」
役はまた彼に言う。
「それを誤るからああなったのだ」
「そうですかね」
「まあそれがいい方向に出たが」
叱ったうえで今度は褒めてみせた。
「そうですよね。首をばっさりでしたし」
「それが上手くいったからいいもののな。いつもああなるとは限らないぞ」
「いつもそうするのが俺ですよ」
やはり反省はなかった。それがはっきりとわかる言葉であった。
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