第六章
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「好き嫌いがあってはそれだけ楽しみが減る、そして偏食は真の美食家のすることではない」
「あらゆる味を楽しまれてだというのですね」
「そうだ」
だからだというのだ。
「私にそれはない」
「ではです」
そのことを聞いてだ、医者はセルバンテスに返した。
「お野菜を今以上に召し上がられればいいのです」
「野菜をか」
「脂肪を減らして」
「そうするべきか」
「何でしたら家の方全員にアドバイスさせて頂きますか」
「典医殿にこれからの予定は」
「特にありません、実はこの足でパリに赴きそこで開業しようかとでも思っていたところで」
特にこれをするという予定はなかったというのだ。
「そうでしたから」
「ではこの屋敷に留まってもだな」
「はい、特に」
何も悪いことはないというのだ。
「では」
「少し診てくれ」
自分だけでなく家の者全てをだというのだ。
「流石に誰もすぐに死にたくはないだろうからな」
「人は必ず神の御前に行きますが」
このことは避けられない、人は絶対に死ぬのだ。
だが、だ。それでもなのだ。
「それは出来る限り遅い方がいいですから」
「そうだ、私ももっとだ」
「美味しいものをですね」
「食べていきたい」
この本音をだ、こう言ったのだった。
「絶対にな」
「それではですね」
「頼む、色々と教えてくれ」
「わかりました、それでは」
こうしてだった、医者はセルバンテスに雇われてそのうえで彼の家で食事の指導にあたった、当然ながらフォアグラなり無理に太らせた動物の肝臓や身体はあまり食べられなくなった、というよりかはである。
動物をそうして食べることは止められた、医者は言うのだった。
「動物の肝臓、内蔵を食べること自体はいいのです」
「健康にいいのか」
「はい、しかしフォアグラ等は」
これにして食べることはというのだ。
「よくありません」
「無理に太らせるからか」
「身体を動かすことが健康にいいことは動物も同じです」
人間と同じくだ、それはというのだ。
「健康な動物を食べる方がいいのです」
「だからか」
「はい、そうした動物を食べることは」
脂肪が無駄に多い動物、しかも不健康なものを食べるからだというのだ。医者はセルバンテスにこう話すのだった。
「いい筈がありません」
「そうだったのか」
「フォアグラは確かに美味ですが」
珍味と言っていい、だから美食家のセルバンテスも愛しているのだ。
だが、だ。そうした不健康な育てられ方の為だというのだ。
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