第五章
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「それもよくありません」
「砂糖もか」
「脂肪が多過ぎる肉というのも」
「ではフォアグラはどうなのだ？」
「あれは一番よくありません」
はっきりとだ、医者はセルバンテスに答えた。
「これは中国の言葉ですが医食同源でして」
「食事と医学は同じか」
「そうです、食事がよければ」
それでだというのだ。
「身体もいいのです」
「そうなのか、しかし」
「フォアグラは鵞鳥を無理に太らせたものの肝臓です」
だから肝臓も肥大化しているのだ、病的に。
「その鵞鳥の肉も脂肪がつき過ぎているので」
「食しては駄目か」
「食べ過ぎては」
よくないというのだ。
「あまり」
「では他の動物、豚や牛もそうして食べることは」
「まさかそうしたことまでされているのですか！？」
その話を聞いてだ、びっくりした顔で問い返した医者だった。
「豚や牛も」
「中々美味だ、しかしか」
「よくありません、脂肪を摂り過ぎています」
医者は無意識のうちにセルバンテスのその巨大な腹を見て言うのだった、見ればその頬もかなりたるんでしまっている。
「本当にこのままでは」
「私達は皆死ぬか」
「そうなります」
「ううむ、それは困るな」
「ではです」
セルバンテスが自分の言葉に難しい顔になったのを見てだ、すぐにだった。
医者は彼にだ、こう言うのだった。
「フォアグラ、他の動物もそうして食べることは止めて」
「そしてか」
「運動をされて下さい」
「甘いものもだな」
「あまり極端なものは」
止めるべきだというのだ。
「そうされて下さい」
「そうか」
「そうされますか？」
「美味いものはこのまま食べられるのだな」
伊達に美食の達人とまで言われていない、それでだった。
セルバンテスは節制によりそれが止められると思ってだ、医者に対して怪訝な顔でこう問うたのであった。
「それはどうなのか」
「出来ます、ただ」
「ただしか」
「あまり脂肪と甘いものは」
「その二つはか」
「極端なものは」
ある程度ならいい、しかし極端なものはというのだ。
「お砂糖も少々ならいいのです」
「そうか」
「お言葉ですが侯爵はお砂糖を入れ過ぎです」
「強い甘さが好きなのだが」
「強過ぎます」
やはり過ぎるというのだ。
「フォアグラもです」
「食べ過ぎか」
「そう思います、あとお肉以外も召し上がられますね」
「私に嫌いな食材はない」
豪語した、このことは。
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