19部分:第十九章
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店を出てから二人はそのリンデンバウム家の墓地に向かうのであった。その途中で本郷はリンデンバウム家とは関係ない話を役に対してしてきた。
「ところでですね」
「何だ?」
「ドイツに来て思っていたことですけれど」
そのうえ店また思ったことである。それを役に話すのであった。
「ドイツ人ってあれですよね」
「あれではわからないが」
「いえ、何か太った人が多くて」
まずはこれであった。
「それで頭が禿げた人が多いような」
「それは気のせいではないな」
役の返事はドイツ人にとってはあまりに惨いものであった。
「君の見た通りだ」
「やっぱりそうですか」
「しかもだ」
役の容赦のない言葉は続く。
「痛風も多い」
「痛風ですか」
「これはどうしてかわかるな」
「痛風ですよね」
ここに大きなヒントがあった。これ以上はないヒントが。
「ビールですか」
「そうだ、それだ」
やはり答えはそこであった。ビールは痛風にかなり悪い。実際のところワインの方が身体にいいのである。だがそれでもビールはかなり美味いのであるが。
「そのせいでな。痛風も多い」
「あとあれですかね」
本郷はビールの話を聞いてまた考えるのであった。歩きながら。周りには今も緑の森が生い茂っているのが遠くに見える。近くにはのどかな田園がある。ドイツののどかな田舎の風景である。
「ソーセージとかバターとか」
「肉料理が多いとな。やはり危ない」
「俺の好きな組み合わせなんですけれどね」
本郷はここで自分の好みを述べてきた。
「ビールとソーセージやバターをたっぷり塗ったジャガイモとかチーズ使った料理とか」
「あれはいいものだ」
役の好物でもあるようだ。
「けれどそれがいつもだとやっぱり駄目なんですか」
「特にビールだ」
やはりこれであった。
「いつもいつも飲んでいるとやはり身体に悪い」
「ですよね」
「ルターがいたな」
プロテスタントの創始者である。非常に戦闘的な宗教観と人生を送った人物であるとされている。
「彼も痛風持ちだった」
「やっぱりビールですかね」
「彼は何時間もビールの害毒を講義した」
「じゃあ違うんですね」
「ところがだ」
しかしここで役は言うのであった。ルターの意外な一面を。
「彼はその講義の後でビールを美味そうに何杯もゴクゴクと飲んだそうだ」
「そりゃ駄目じゃないですか」
本郷はそれを聞いて思わず呆れてしまった。
「だからですね。痛風になったのは」
「そうだ。他にも彼と対立したカール一世や」
神聖ローマ帝国皇帝でありスペイン国王でもあった。ハプスブルク家の者である。
「他にも三十年戦争の名将ワレンシュタインも痛風持ちだった」
「有名人にも痛風が多いんですね」
「そして今
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