18部分:第十八章
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てきた。
「東ドイツになる前はね」
「はい」
今はもうなくなってしまった国家であった。冷戦の時にはソ連の最も頼りになるパートナーでもあったこの国家も今では東西ドイツの統一によりなくなってしまった。今では歴史にその名があるだけである。おかみの記憶の中でもあまり濃くはないようであった。
「ここの領主様だったしね」
「領主だったんですか」
「あんた達にはピンと来ない話みたいだね」
「そうですね」
本郷は今度はアイスバインを食べていた。豚肉のその濃厚な味を楽しみながらまたおかみの話を聞いていたのである。
「領主って言われても」
「それならそれでいいよ。お墓だってある程だよ」
「お墓ですか」
「そうだよ。代々のね」
役はそれを聞いてわかった。あの兄妹の家はかなりの名家であると。代々の墓が領地にあるということはそれだけの古さと力があるという証拠だからだ。
「ここからちょっと東に行ったところにあるよ」
「東ですね」
「ああ、そうだよ」
おかみの返事はあっさりとしたものであった。彼女にとっては何でもないことがわかる返事であったがそれでも二人にとっては違っていたのだ。真剣さを表情から隠しながら彼女の話を聞いていた。
「東だよ。よかったらお参りでもするといいよ」
「わかりました」
「しかし。驚いたね」
ここでおかみの顔が驚いたものになっていた。それには理由があった。
「あんた達。随分食べるのも早いんだね」
「そうですか?」
「もうあらかた食べてるじゃないか」
呆れると共に称賛さえしていた。何ともう殆ど食べ飲んでしまっていたのだ。
「凄いね、全く」
「普通だと思いますよ。ねえ」
本郷はそう役に問うたのだった。おかみのその言葉を受けて。
「これ位は」
「そうだな」
役も本郷のその言葉に頷いた。
「私もそう思いますが」
「いや、普通じゃないよ」
おかみはすぐにそれを否定した。
「そりゃね。ドイツ人だってかなり食べるよ」
「ええ」
「それでもあんた達みたいには。そういえば」
ここでおかみはもう一つ気付いたことがあった。
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