第三章
[8]前話 [2]次話
その少女エリザベートがだ、こう兄に言うのだ。
「むしろ噂以上です」
「心根の綺麗な方か」
「そのお姿以上に」
容姿も噂通りだ、だがだというのだ。
「心根の非常に綺麗な方です」
「そうか、では」
「お兄様が伴侶となさるなら」
「これ以上はないまでの方だな」
「ですが」
それでもだとだ、エリザベートは兄に忠告もした。
「あの方は贅沢にも豪奢にも心を惹かれません」
「あくまで質素か」
「そうです」
「やはり誰もがか」
フランツは妹の言葉を聞いてその顔をさらに真剣なものにさせた。
「告白しても。どんな贈りものをしても」
「ご自身だけ楽しまれても意味がないと」
「そうか」
「そのお心に適うにはです」
贅沢は何の意味もないというのだ。
「そのことがご存知ですね」
「既にな。しかし」
「はい、ご用心を」
「わかった」
フランツはエリザベートの言葉をここまで聞いてから贈りもののことを本格的に考えた、その中でだった。
彼は自身の邸宅の庭を窓から見た、そのうえで今も傍に立っている執事にこう言うのだった。
「庭は今は誰もいないな」
「そうですね、冬ですから」
侯爵家の邸宅の庭は開放されている、民達にも観てもらい楽しんでもらっているのだ・
だが今は冬だ、それでだった。
「誰も来ません」
「冬に咲く花は少ない」
フランツは寂しい声で言った。
「花のない庭には誰も来ないか」
「そうですね、残念ながら」
「冬に咲く花を探すか」
「冬のですか」
「あの庭は誰もが観て楽しむものだ」
それ故にだというのだ。
「だからこそな」
「冬に咲く花といえば」
執事はここでだ、己の頭の中にあるものを察して述べた。
「椿でしょうか」
「椿か」
「東洋の花です、これは如何でしょうか」
「考えてみよう、冬にも花があればこれ以上いいことはない」
「そうですね」
「この庭もより楽しんでもらえる、だが」
ここでだ、フランツはふと思い立った。その思い立ったこととは。
「他にも必要か」
「この庭園の他にも」
「公園を作るか」
それをだというのだ。
「領地内にな」
「そうですね、そしてそこもですね」
「開放する」
誰にもだというのだ。
「そして観て楽しんでもらう」
「それはいいですね、では」
「場所を探し然るべき場所に作る」
公園、そこをだというのだ。
「そこにも様々な木々と花達を植えよう」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
フランツは屋敷の庭園に冬の花、椿を置くだけでなく公園も作らせた。予算は全て自分の資産から出してそうした。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ