第一章
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すみれ姫
アルデンフェルト王国のリサ王女は可憐なことで知られている。
小柄であり黒い髪は細くやや癖がありショートにしている。目は綺麗な黒く輝くもので垂れ目である。
白い歯は八重歯になっており口は見事な形をしている。慎ましやかで思いやりがありそれでいてよく気の利く王女らしからぬ気取らなさも評判である。
そのリサは外見だけでなく性格も人気がある、その彼女に求婚する者は後を絶たない、だがそれでもであった。
リサはその求婚者にどんな贈りものをされてもだ、こう言うだけだった。
「私はどんな宝石も富も欲しくはないのです」
「では何を欲しいのですか?」
「一体」
「誰もが。私だけでなく」
彼女だけでなく、というのだ。
「喜ぶものがいいのです」
「誰もが喜ぶもの」
「それを持って来た者とですか」
「その人の心根も見て」
そしてだというのだ。
「それからです」
「伴侶とされたいのですか」
「そうお考えなのですね」
「はい」
その通りだというのだ。
「そう考えています」
「ではそのことをお触れにします」
「そうして国中に知らせます」
廷臣達はリサに応えてだ、すぐにだった。
リサの言葉をお触れとして国中に知らせた、無論その言葉を適えた者が彼女の夫となることも知らせたのである。
そしてだ、その知らせを聞いたあらゆる者がリサの前に出てそれぞれが想う誰もが喜べるものを差し出した。
絵画もあれば花もある、そして彫刻も。
だがそのどれを見てもだ、リサは首を横に振らなかった。
このことは他国にも伝わり多くの者がアルデンフェルトに来た、だが。
それでもだ、全くだった。
誰もリサをよしとは言われなかった、遂にはリサが何を求めているのか誰もわからなくなってしまった。求婚者は途絶えぬがその誰もだった。
駄目で元々という感じで挑戦するだけだった、そしてその誰もがあえなく首を横に振られた、リサの残念な顔と共に。
こうしたことが一年続いた、このことはアルデンフェルトと国交のあるスタンデール王国にも伝わっていた、その王国からも求婚者が出ていたが。
「アットハイム伯爵もか」
「はい、駄目でした」
口髭を生やした執事がだ。黒髪を後ろに撫でつけた背の高い青年に応えた。青年は青い貴族の服を着ている、服には白いフリルもある。
目は黒く強い光を放っている、面長の顔は整い彫刻の様だ、鼻は高く唇は引き締まり小さい。
この青年の名をフランツ=フォン=シュタインベルクという。爵位は侯爵であり王国の中では名門の中に入る。
既に父から爵位と家督を受け継ぎ屋敷も財産も己のものとしている、だが彼はまだ妻を迎えておらず独身だ。
その彼がだ、屋敷の己の部屋で椅子に座ったまま執事
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