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第三章

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「もっと抑えなさい」
「さもないと変質者にしか見えないから」
「変質者って」
 流石に今の指摘にはむっとした顔になる、だがだった。
 その指摘には参った、それで今は表情を何とか引き締めた。
 しかし少しでもデートのことを考えれば怪しくなる、変にうきうきとして緩みきった顔になってしまう。そうして日曜を待っていた。
 土曜日は特に凄かった、夜の十二時になってもだ。
 自分の部屋で服を探しそしてメイクも念入りにチェックしていた、そうしたことを延々と繰り返していたのである。
 その彼女にだ、母は扉をノックして入って来てこう言ったのだった。
「もう寝なさい」
「わかってるけれど」
 衣装合わせをしながらその母に応える。
「けれどね」
「それでもっていうのね」
「そうなの、服もメイクも気になって」
「それでももう寝なさい」
 母の言葉は簡潔だった。
「いいわね」
「夜遅いからよね」
「夜更しをしたら何にもならないでしょ」
 正論であった、しかもこの正論はさらに続いた。
「寝坊したり寝不足が顔に出たらどうするのよ」
「そうしたことはわかってるけれど」
「じゃあ早く寝なさい」
 娘に再びこう告げる母だった。
「わかったわね」
「じゃあ」
「そんなに寝られないのならウォッカがあるから」
 酒の中でも極めつけに強いそれがだというのだ。
「今から飲んで後はね」
「すぐに寝ろっていうのね」
「そう、寝ないより寝る方がいいに決まってるでしょ」
 あれこれ言うよりそれよりもだというのだ。
「だからよ。とにかく寝なさい」
「ううん、それじゃあ」
「ボトル全部開けてもいいから」
 これも娘を気遣っての言葉だ。
「睡眠はデートの第一歩よ」
「わかったわ、それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
 こうして母は娘にウォッカを本当に読ませてそのうえで休ませた、その次の日の朝にだった。
 由紀は母に起こされてすぐにシャワーを浴びた、そしてだった。
 白と青のロリータファッションに身を包んだ、そのうえで母にこう尋ねた。
「これでどう?」
「また可愛いのにしたのね」
「少し考えたけれどね」
 このファッションにしたというのだ。
「どうかしら」
「いいんじゃない?じゃあ朝御飯もしっかり食べて」
「歯も磨いてよね」
「そうよ、それでね」
「メイクもしたし」
「気合入れて行きなさい、いいわね」
「ええ、じゃあ」
 由紀は母の言葉に頷いた、だがだった。
 その娘にだ、母はこうも言った。
「ただね」
「ただって?」
「今日まで本当に」
「でれでれしてたっていうのね」
「そうよ、もう見ている方が何だっていう位にね」
「途中から気をつけてたけれど」
「それでもよ」
 こう娘に言うのである。
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