15部分:第十五章
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第十五章
「この辺りを見回ることもできるな」
「そうですね。それにしても」
本郷はここで話を変えてきた。
「どうした?」
「ハインリヒさんでしたよね」
彼について話すのであった。
「結構明るくて表情が豊かな人でしたね」
「いや、あれで普通だ」
だが役は明るいというのにも表情が豊かというのにも頷きはしなかった。むしろ普通だと断定さえしたのである。
「普通ですかね」
「周りがあまりにも表情がなさ過ぎる」
彼はそれを根拠にした。
「だからだ。そう見えるだけだ」
「まあ一理ありますね」
本郷も一応はその言葉に頷いた。
「そう言われれば」
「どう思う、君は」
役はそれを話したうえで本郷に尋ねてきた。
「エルザさん達ですか」
「そう、特に彼女だ」
その中でもエルザに焦点を絞らせる。
「彼女の表情と彼の表情を見比べてみれば」
「対象的ってレベルじゃないですよね」
本郷も朝食での二人での顔を脳裏で見てそれを考えるのだった。
「あれはもう」
「そうだ。まるで人間と人形だ」
「人形ですか」
本郷は役の人形という言葉に目を動かさせた。鋭くさせたのだ。
「言われてみればそうですね」
「最初からどうもそうしたものがあったがな」
「ですね。ハインリヒさんと並ぶと尚更にそれを感じますね」
「人間だと思うか」
役は今度はそれを問うのであった。
「彼女は」
「そう言われるとですね」
本郷はその鋭くさせたままの目で答える。
「言えませんね。あれは」
「そうだな。やはり人形にしか見えない」
考えれば考える程そう思えるのだった。これは役だけではなく本郷も同じであった。それに城に入る前に式神でのことも考えるのだった。
「ましてや。式神は反応しなかった」
「考えれば考える程わかりませんね」
「いや、結論は一つだ」
ここで役は言った。
「おそらく彼女はだ」
「人間じゃないですか」
「そうだ。しかし」
だがここでまた疑問が脳裏に浮かぶのであった。
「機械にしてはだ」
「何かおかしなところがありますか?」
「いや。見ただけだがな」
役は今度は己の視覚を使って言うのだった。
「機械には見えない」
「表情は全くありませんけれどね。気配も」
「機械ではあっても機械ではない」
役も言う。
「何なのだろうな」
「わからなくなってきましたね、どうにも」
煮詰まってきたのを感じていた。それで本郷はここで話題を変えることにしたのであった。
「それでですね」
「何だ、今度は」
「気分転換といきましょうよ。これ以上今考えてもどうにもなりませんよ」
「気分転換か」
「ええ、今はそうしましょう」
本郷の提案はこうであった。
「美味いものでも食べて。どうでしょうか
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