14部分:第十四章
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なるのである。
「ですがこのチーズは」
「そういえば」
本郷は今出されているチーズを食べてみてふと気付いたことがあった。
「牛のものではないですね。これは一体」
「山羊のものですね」
役がこう述べてきた。
「これは」
「よくおわかりですね」
ハインリヒは彼の言葉を聞いて顔を綻ばせるのであった。正解を聞いて満足しているのがわかる。
「その通りです。これは山羊です」
「山羊のチーズですか」
「意外とよくあるものだ」
役は本郷にも言うのだった。
「欧州ではな」
「そうだったんですか。何か牛のものとはまた違った独特の味ですね」
「まあ乳製品に関しては我々は昔から作っていますので」
ハインリヒの顔は綻んだままであった。
「牛だけでなく。この山羊や羊、馬からも作りますよ」
「ああ、馬は聞いたことがあります」
本郷はそれは知っているようであった。
「モンゴルとかではそれが多いらしいですね」
「はい。欧州でも僅かですが馬からも作ります」
「そうですか。何かドイツといっても色々ありますね」
彼はそれをあらためて思うのであった。そうしてハインリヒに対してまた言った。
「何か余計に食べたくなりました」
「嬉しい御言葉ですね、それは」
「はい。それでですけれど」
彼はそのうえでハインリヒにまた問うた。
「この辺りで美味しい店とかあれば教えてくれませんか」
「味の探索ですか」
「そうです。日本人の旅の目的は多くの場合まずは」
本郷の顔が笑っている。ドイツ料理に満足して話しているのがすぐにわかる顔であった。
「食べ物なんですよ」
「食べ物ですか」
「当然そうじゃないって人もいますけれどね」
それに関してはやはり人それぞれである。だがそれでも食べ物が大きく関係しているのは事実である。そうしたものなのである。
「俺はそうなんで。宜しければ」
「わかりました。それでは」
ハインリヒは笑顔でその申し出を受けて彼にこの辺りで美味しい店を教えるのであった。こうして彼は役と二人でその店に行くことになった。朝食と身支度を終えると二人は歩きながらその店に向かうのであった。
「少し早いですけれどね」
「だが時間があればだ」
役は辺りを見回しながら本郷の言葉に応えていた。辺りはのどかな農村だ。麦やジャガイモの畑があり水車がゆっくりと回っている。鶏や豚ものどかに動いている。まるでここだけ時間が止まっているかのようにのどかな、昔ながらの風景が広がっている。
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