第五章
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「だから契約してなの」
「この店に来てもらいました」
そうした事情だったというのだ。
「それでなんです」
「オーナーさんもいい目をしてるな」
「ええ、かなり」
リューは笑顔でマスターの話もする。
「何でも祖国でもバーをされていたそうで」
「祖国?」
「はい、祖国です」
リューはサイチチャンの問いに笑顔で答える。
「シンガポール生まれではないんですよ」
「へえ、そうなの」
「オーナーはこの国の生まれじゃないの」
「マレーシアです」
その国の生まれだというのだ。
「この国が出来てすぐに一家で移住されてきたんですよ」
「ふうん、そうなの」
「マレーシアとシンガポールは元々一緒に国だったわね」
ワルシャーンとハマラージもこれで納得した。
「それでなのね」
「一緒なのね」
「オーナーは今日は店に来られています」
リューはこのことも話した。
「ほら、丁度今カウンターにおられますよ」
「へえ、あの人かい」
サイチチャン達はカウンターの中にいる小柄な老人を見た。皺だらけの褐色の顔で大きな目をしている。白髪をオールバックにしている。
その彼がだ、この店のオーナーだというのだ。
「成程ね」
「私のバーテンの師匠でもあります」
「オーナーはもうご歳だけれどね」
それでもだとだ。ベスピッチも話す。
「バーテンの腕はシンガポール屈指よ」
「へえ、そこまでなの」
「凄い人なのね」
「ダンスもされていました」
リューはこのことも話した。
「とはいってもオーナーは洒落たジャズダンスやタップダンスですが」
「そっちなんだな」
「はい、そうです」
「成程な、面白い人だな」
「立派な方ですよ」
「オーナーさんはもう踊れないんだよな」
サイチチャンはリューの言葉からこのことを察してそのリューに問うた。
「今は」
「はい。腰がよくなくて」
それでだというのだ。
「今は」
「そうか、じゃあしようがないな」
「そうなんです。ですが腰の調子がいい時は」
「店に来てか」
「他のお店の場合もありますがああされています」
今も自らバーテンをしているというのだ。
「本当に素晴らしいバーテンダーですので」
「じゃあ今からそのオーナーさんのカクテルもらおうかしら」
「そこまでいいのなら」
ワルシャーンとハマラージがここでこう言った。
「そうしていいわよね」
「一杯」
「ええ、是非共」
リューも笑顔で応える、そしてだった。
三人はカウンターに向かった、ワルシャーンとハマラージは席を替えた。
ベスピッチはピアノの演奏に戻りリューはカウンターの中に戻った、そのうえでオーナーに事情を話した。
「そういうことですが」
「よし、そうか」
オーナーは彼の言葉に笑顔で応
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