第二章
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「如何ですか?」
「いいね、僕タンゴは専門じゃないけれど」
それでもだとだ、サイチチャンはこれまでとは変わって笑みになってそのうえでリューの申し出に応えた。
「一緒に踊ろうか」
「はい、それでは」
「男同士のタンゴもいいよね」
「タイではそれもよくありますか?」
「まあそういうことにも寛容な国だけれどね」
つまり同性愛にもだ、タイはそうしたものやニューハーフにも極めて寛容な国なのだ。
「タンゴは僕の知っている限りはね」
「あまりですか」
「ないね」
そうだというのだ。
「これといって」
「そうですか」
「けれど踊ろうよ、マスターがいいのなら」
こうマスターに言う。
「今飲んでるのを飲み終えてね」
「私の方も一段落ついたらですね」
「そう、その時にね」
「では後は若い子に任せて」
今丁度カクテルを作り終えた、サイチチャンもぐい、と飲み干した。そうしてだった。
二人で店の中央に出る、そしてだった。
ピアノ奏者の美人にだ、二人で笑顔で告げた。
「では今からね」
「タンゴのいい曲、どれでもいいからね」
「御願いできますか、一曲」
「そうしてくれるかな」
「わかりました」555
美人はリューの言葉に笑顔で応えた、そしてだった。
二人は男同士だがそれでも一緒にダンスをはじめた、それはタンゴだった。アルゼンチン由来のそのタンゴの演奏に乗って踊る。
リューは流石にそちらでも知られただけはある、実に慣れたものだ。そしてサイチチャンもその踊りはというと。
実にいい、リューは自分に的確に合わせてくれる彼にこう囁いた。
「いい感じですね」
「上手かな」
「はい、そう思います」
サイチチャンにニコリとして述べた言葉だ。
「タンゴははじめてですよね」
「うん、そうだよ」
「それでそこまでなのですか」
「いつも踊っているせいかな」
踊りのジャンル自体は違う、だがいつも音楽を聴いて身体を動かしているからだというのだ。
「動けるのかな」
「そうかも知れませんね、では」
「それではだね」
「もう一曲いきますか?」
今の曲は終わりに近付いている、リューはそれでサイチチャンにこの誘いをかけたのだ。
「そうされますか?」
「いいね、それじゃあね」
「はい、それでは」
リューもサイチチャンににこりと笑って応える、そしてだった。
今の曲が終わってからだった、リューが美人にもう一曲頼もうとした。
「もう一曲ね」
「ちょっと待ってくれるかしら」
ピアノの傍の一席から一人立ち上がって来た、それは青いドレスの女だった。
見事な黒髪を後ろで束ねたおやかな感じのスタイルも見せている。切れ長の黒い奥二重の目に唇は薄く横に広い、鼻は適度な高さで前に出ている感じだ。
その彼
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