1部分:第一章
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述べて特に西洋人達を責めないのであった。
「彼等も生きていかなくてはならなかったからな。狼もそうだが」
「生きるか死ぬかですか」
「当時の欧州は貧しかった」
こうも言う。
「それこそ壊血病や飢餓が常に隣り合わせだった」
「壊血病ですか」
本郷は壊血病の病名を聞いて思わず顔を顰めさせた。その病気については彼も知っていた。
「そんなものまであったんですね」
「日本ではなかったな」
「ないですね」
首を傾げて述べる。
「流石にそれは」
「餓えも欧州に比べればずっとましだった」
「そうなんですよね、確か」
「天明の飢饉でもフランスの豊作の時より餓死者は少なかった」
「フランスっていうと確か」
本郷はここで己の記憶を辿る。何時の間にか森もそこに差し込む光も見なくなっていた。そうして己の記憶を見るのであった。
「欧州で一番豊かな国でしたよね、農業だと」
「そうだ。そのフランスでだ」
役は語る。
「豊作でも日本の凶作より餓死者が多かった。あの時代でもだ」
「それを考えると凄いですね」
本郷は役の話を聞いてあらためて思うのだった。
「欧州の貧しさっていうのは」
「最初は豊かだと思っていただろう」
「子供の頃はそうですね」
本郷もそれを認める。
「童話とかを見て。あんな贅沢なお城に住んでいて奇麗な服を着ているものだと」
「王侯貴族はそうだった」
あえて限定してみせる。
「しかもだ」
「しかも?」
「あの城もそう住み心地のいいものではなかったし服もな。そう何着もあるものではなかった」
「本当に豊かになるのはやっぱり近代以降ですか」
「ジャガイモが入ってからだな」
新大陸から渡ってきた食物が話に出た。
「あれは痩せた土地でも寒冷な土地でも採れるからな」
「まずは食べ物ですからね」
「特にこのドイツはそうだ」
ここまで話して今二人がいるこの国についてようやくといった感じで言及された。
「ジャガイモが入ってようやく飢餓とも貧困とも離れることができた」
「ジャガイモでですか」
「壊血病もなくなった」
先程出た病気についても言及された。
「そうして発展できるようになった。ドイツもジャガイモがなくてはただの貧しい国でしかなかった。神聖ローマ帝国と名前だけは立派でもな」
「ですね。もっともあの国って殆どあってないようなものでしたけれど」
神聖ローマ帝国は不思議な国であった。皇帝はいたがその力は弱く各領邦国家に分かれており互いに争い続けていた。ハプスブルク家が主になってもそれは変わらず長い間争い続けてきており三十年戦争で国はほぼ瓦解した。そうしてナポレオンによりその名前も完全に消されたのである。
「本当の意味で強くはなかったんですね」
「それどころか統一国家でさえなかったか
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