第二部 文化祭
第42話 再び森へ
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ついに、文化祭が2日後にまで迫ってきた。土曜日だが、明日はそれぞれ用事があるので、細かい練習ができるのは今日までということになる。
「よし!」
アスナが楽しそうに言う。
「じゃあいくよ、キリト君!」
「あ、ああ……」
まりあが先日突然、『新しい曲目を加えたい』と言い出した。
加えるのは?Sing All Overtures?という歌で、アスナ、シリカ、リズベット、ユイ、直葉、それから何故か俺(ほんとなんでだ)のメンバーで歌うようにまりあが作ったらしい。
「シャキッとしなさいよ、キリト!」
リズベットが俺の背中をバシッと叩く。
アスナがすぅっと息を吸い込む。次いで、桜色の唇から、美しい旋律が奏でられる。
最初はアスナ1人で歌い始め、その後にリズベット、シリカ、ユイ、直葉と順番に続くようになっている。
──立ち止まる朝 ふと目を閉じて思い出すの
いつもと変わらぬあの日の 大切な人の笑顔を
リズベットが微笑み、同じように息を吸う。
──始まり告げた鐘の音は今も響いてる
どれだけ遠くに来たって どれだけ小さくなっても聞こえる
*
「もう、これで終わりなんだな……」
練習終了後、俺がもらした呟きに、アスナがそっと首を横に振った。
「終わりなんかじゃないよ。続けたいなら、また皆で集まればいいよ」
「……そうだな」
「うん。それに、まだ当日のリハーサルだって残ってるじゃない」
アスナがにっこりと微笑む。
ユイも満面の笑みで言う。
「ユイ、楽しかった! またやりたい!」
「おいおい、まだ文化祭は終わってないんだぞ?」
俺が苦笑しながらユイの頭を撫で、アスナがふふっと笑った。ユイも擽ったそうに笑った。
こんな風に『確かな幸せ』を実感したのは、何年ぶりだろうか。
この時間が、一生続けばいいのに──そう思った瞬間。
「…………ぅ………………あっ……………!!」
ユイが突然頭を抱えて苦しみ出し、崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「ユイ!?」
「ユイちゃん!?」
アスナがユイの小さな体を支える。
「わ……たし、は……ずっと、1人で………暗いところ、に……い、た……」
鈴の音のように澄んだ声で発せられる言葉は、壊れかけた機械のようにたどたどしい。
アスナが口を両手で押さえて言う。
「ずっと、暗いところに……? もしかして、あの森の中のこと……?」
「……行ってみるか?」
「……うん」
アスナが首肯した。
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